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2022年7月
2ヵ月連続! 隠れた傑作ホラーを
観る。掘る。もっと。

知る人ぞ知る傑作ホラーを2ヵ月連続でお届け!
誰もが知っているような有名作ではないものの、みどころに溢れたレアなホラー作品を集めました。
マスター素材の紛失で長らく幻と言われていたが、素材が発見され再び陽の目を見たブルック・シールズの映画
デビュー作『アリス・スウィート・アリス』、 イタリアンホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェント監督が
『サスペリア』『インフェルノ』に続いて描く“魔女三部作”完結編『サスペリア・テルザ 最後の魔女』、
ニュージーランドのホラー映画でその長い邦題でも話題となった
『マイドク』(略題)はHDマスター版をTV初放送!
この夏、見たことがある人もない人も、この奥深いホラーの世界にどっぷりハマってみるのはいかがでしょう?

放送作品ラインナップ

STAR27/5(火)~7/8(金) よる 9:00~ 4日連続放送 /
7/16(土)~7/17(日)よる 11:00~ 2日連続放送(全5作品)

特集 深堀り解説コラム
「隠れた傑作ホラー映画を観る①」
“日本語タイトル”に原題への忠実さは必要か
(解説・文/松崎健夫)
 
映画にとって“日本語タイトル”はどうあるべきか。昨今、その議論や是非に対して、やや寛容でない傾向にあることを危惧している。原題に忠実でない、或いは、原題の意図を汲んでいない、といったケースにおいて、まだ作品そのものを観ていないはずの映画ファンたちからバッシングを受け、炎上するといった現象をしばしば目撃するようになったからだ。このような事例には、ある共通点を見出せる。それは、欧米で製作された英語作品に集中しがちだという点。「日本で公開される映画の比率は欧米の作品が高い」という理由も考えられるが、例えば、ベトナム映画、イラン映画、メキシコ映画といった1990年代以降に国際的な評価が高まった作品群において、“日本語のタイトル”に対する炎上案件を見つけることは困難だという事実もある。
つまり、ある程度の英語が理解できる日本人が増え、英語が理解できるからこそ、原題との乖離が気になるようになったということなのだろう。筆者はこの不均衡に不公平を感じている。“日本語タイトル”に原題への忠実さや意図を重視するなら、欧米の映画に限らず、あらゆる国で製作された映画に対してあまねく公平に指摘すべきではないかと思うからだ。勿論、そんなことを望んでいるわけではないのだが。

 このようなことを話題にしているのには理由がある。それは、今回の特集で放送される作品にも、「タイトルの在り方」の様々なパターンを指摘できるからだ。例えば、ダリオ・アルジェント監督の『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(07)。タイトルからも判るように、ダリオ・アルジェント監督による『サスペリア』(77)の続編的な作品だ。厳密には『インフェルノ』(80)を挟んだ<魔女三部作>の3作目で、完結編に位置する。だが、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』の原題は、「Le Terza Madre」で「三番目の母親」という意味になる。つまり、“日本語タイトル”は原題と全く異なるものになっているのだ。そもそも、『サスペリア』における“日本語タイトル”の歴史にはいわくがある。『サスペリア』は日本で社会現象にもなった映画だが、その一端を担ったのは、作品そのものを観ていないであろう当時の子どもたちだった。テレビ番組「8時だョ!全員集合」で志村けんさんが、『サスペリア』のキャッチコピー<決して、ひとりでは観ないでください>を連呼して、爆笑をさらっていたからだ。そのブームにあやかって、配給の東宝東和は『サスペリアPARTⅡ』(75)を公開。原題を「PROFONDO ROSSO」=「深い赤」とするこのPARTⅡは、『サスペリア』の続編などではない。そもそも製作年が1975年であることからも判るように、『サスペリア』よりも前に製作された全く関連性のない作品を、日本ではPARTⅡとして公開させたのだ。現代の感覚からすれば、まさに炎上案件である。しかし、当時を知る映画ファンが激怒しているかというと、そうでもない。どちらかというと、斯様ないい加減さを楽しむような牧歌的雰囲気さえある。

『マイドク/いかにしてマイケルはドクター・ハウエルと改造人間軍団に頭蓋骨病院で戦いを挑んだか』(83)は、その長い“日本語タイトル”が公開当時話題となった作品。原題は「Death Warmed Up」=「死のウォームアップ」と、実にあっさりしたものだ。長い“日本語タイトル”を持つ映画の代表といえば、最長の記録を今なお保持するピーター・ブルック監督の『マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺』(67)や、スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(64)が挙げられる。『マイドク』は、その文脈から付けられた“日本語タイトル”なのだと解せる。監督のデヴィッド・ブライスは、後にハリウッドへ渡るも、『デビルジャンク』(89)の監督を撮影途中に解雇されたことで知られる人物。ニュージランド出身の彼は、当然『マイドク』の公開時は無名な存在。そもそもこの映画には、著名な俳優も出演していない。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督もニュージーランド出身の映画監督だが、『マイドク』はピーター・ジャクソンが日本に紹介される以前の作品。当時はまだ馴染みの薄いニュージランド製の映画に対して、話題を持たせるための作戦のひとつであったのだと推し量れる。そのインパクトある“日本語タイトル”のおかげか、『マイドク』は今なおカルト的な人気を誇っている。“日本語タイトル”に辿り着くまでの様々な事情を鑑みながら、今回の特集作品を観ると、「なるほど」と思える作品もあれば、「なんじゃこれは」と腰を抜かすような作品もある。そうやって原題と“日本語タイトル”との違いを調べ、楽しんでみるのも、また一興ではあるまいか。

写真:『マイドク いかにしてマイケルはドクター・ハウエルと改造人間軍団に頭蓋骨病院で戦いを挑んだか』(c) 1984 THE TUCKER PRODUCTION COMPANY LIMITED

特集「観る。掘る。もっと。」をスターチャンネルで観よう!

2022年8月
2ヵ月連続! 隠れた傑作ホラーを
観る。掘る。もっと。

知る人ぞ知る傑作ホラーを2ヵ月連続でお届け!
誰もが知っているような有名作ではないものの、みどころに溢れたレアなホラー作品を集めました。
鬼才クローネンバーグ監督初期の傑作『ザ・ブルード 怒りのメタファー』や、
ソフト入手困難なアニマルパニック懐かしの秀作『ドッグ』など、
その他にも知られてはいないが、注目すべき見どころポイントを持った5作品を特集放送します。ぜひお見逃しなく!

放送作品ラインナップ

STAR2 8/11(祝・木)~8/15(月)よる11:00頃~5日連続放送 /
8/18(木)8/19(金)午後 1:50~ 2日連続放送(全5作品)

特集 深堀り解説コラム
「隠れた傑作ホラー映画を観る②」
“二匹目のドジョウ”を味わう
(解説・文/松崎健夫)
“二匹目のドジョウ”という諺がある。「広辞苑」(岩波書店)に“最初と同じことをして同様の成功を得ることのたとえ”と記されてい ように、いわずもがな“二番煎じ”のことである。人間が怠惰な存在で、可能なのであれば楽をして儲けたい、成功したいと夢想するのは今も昔も同じ。映画の世界においても、「ある作品がヒットしたら、似たような作品を製作して当てにかかる」という姿勢によって作られた映画の例は、枚挙にいとまがない。だが時々、“二匹目のドジョウ”を狙ったはずなのに、意外な収穫となる作品が生まれることもある。斯様な作品は、映画史に燦然と輝く不朽の名作にこそなり得ないものの、作品に対する熱心なファンに支えられ、<カルト映画>として根強い人気を維持するケースがある。そもそも観る側も、“二匹目のドジョウ”であることを覚悟の上で鑑賞しているため、掘り出し物といった感覚を抱くのだろう。
今回の特集で放送される作品にも、“二匹目のドジョウ”を狙った結果、現在に至るまで映画ファンから根強い支持を得ている作品がある 例えば、バート・ブリンカーロフ監督の『ドッグ』(76)。この映画は、南カリフォルニアの小さな町で、家畜が襲われる事件が多発し、その真相が明かされてゆくという物語。原題もそのままで、タイトルが示す通り<Dogs>=<犬>をモチーフにした作品だ。説明するまでもなく、<犬>が家畜を襲っているという、さほど捻りのない展開が待ち構えている。だが、恐ろしい映画なのだ。『ドッグ』は1976年に全米で公開(日本公開は1977年)されたが、その前年にはスティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット作『ジョーズ』(75)が公開されている。勘の鋭い方ならお気づきのことだと思う。『ドッグ』は『ジョーズ』の設定を陸地に置き換えることで、“二匹目のドジョウ”を狙った作品だったのである

いわゆる<動物パニック映画>は、『ジョーズ』以前から存在したジャンルだった。例えば、人喰い蟻との死闘を描いたチャールトン・ヘトン主演の『黒い絨毯』(54)や、アルフレッド・ヒッチコック監督の『鳥』(63)はその代表。とはいえ、『ジョーズ』の世界的ブームによって、<動物パニック映画>が粗製乱造されたという経緯に対しては、ほぼ異論が見当たらない。『ジョーズ』の公開によって生まれた<動物パニック映画>といえば、巨大な灰色熊が人間を襲う『グリズリー』(76)、シャチの復讐を描いた『オルカ』(77)、巨大タコが襲いかかる『テンタクルズ』(77)、遺伝子操作された殺人魚の恐怖を描いた『ピラニア』(78)、蜂の大群が急襲する『スウォーム』(78)などなど。例を挙げるとキリがないのだが、製作年を眺めると『ジョーズ』をきっかけにして、70年代にブームが起こったことが判るだろう。手を替え、品を替え、映画製作者たちが恥じらいもなく“二匹目のドジョウ”を狙った時代だったのだ。

そんな潮流の中で“二匹目のドジョウ”を狙って製作された『ドッグ』だったが、今なおカルト的な人気を得た作品のひとつとなっている。現在ソフトが廃盤となり、中古価格が高騰していることも、その隠れた人気を裏付ける証左だろう。『ドッグ』が異色な点はいくつかある。例えば、『ジョーズ』というよりも、むしろ『鳥』に近い構成になっている点。『鳥』では、映画の冒頭で鳥かごをサブリミナル的に見せることで、電話ボックスに閉じ込められたヒロインの姿に皮肉を込めていた。『ドッグ』でも、人間が部屋に閉じ込められてしまうプロセスを描くことで、同様の皮肉が劇中に流れている。また、<犬>同士がコミュニケーションを取り合っているかのような、“悟り”の表情を映し出す<モンタージュ>によって、不気味さを増幅させている点も秀逸だ。さらに、“犬視点”というトリッキーな映像で映画の幕が開ける点も挙げられる。『ジョーズ』の“サメ視点”という主観映像を、「犬の目線」=「超ローアングル」で実践することで、人間を不気味な存在に見せているのだ。

『ジョーズ』は「人間が巨大なサメに勝つ!」という鬼退治のような物語として幕を閉じるが、『ドッグ』はそうならない。『鳥』と同様に、犬が人間を襲い始める理由も正確には説明されない。そして、絶望的なラストショットも待ち構えている。実は、このラストショットに映る“あるもの”をモチーフにした続編が企画されていたが、叶わなかったという後日談もある。そのことが、ラストをさらに不気味なものにさせているのは、なんとも皮肉なことだ。ちなみに、今回放送される『デアボリカ』(74)も、『エクソシスト』(73)の“二匹目のドジョウ”を狙って製作されたイタリア製ホラー。よくよく考えると『ローズマリーの赤ちゃん』(68)の要素まで加わっている。ただし、(当時の感覚だと斯様な作品に出演するなど予想もしなかった)ジュリエット・ミルズの形相は、『エクソシスト』のリンダ・ブレアより恐ろしい!ともっぱらの評判だった。

写真:『ドッグ』(c) 1976 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

特集「観る。掘る。もっと。」をスターチャンネルで観よう!

2022年9月
日本VS世界のホラーを
観る。掘る。もっと。第3弾

今改めて注目を集める映画ジャンル“ホラー”。
ひと昔前は敬遠されていたホラー映画も今では恐怖の描き方が多様化し、
広く楽しまれる人気ジャンルとしての地位を獲得しています。
そんなホラーの中でも、今だからこそ注目したい「日本のホラー」と「世界のホラー」の見くらべ対決を
お届けする特別企画を昨年に続いて特集放送!
それぞれテーマは同じでも国が違えば表現方法も全く違う!
ぜひ見くらべてお楽しみください。

放送作品ラインナップ

【 変身人間対決編 】

STAR2 9/3(土)夕方 5:20~ 一挙放送 / 9/16(金)よる 9:00~
一挙放送 ほか(全2作品)

【 おばけ屋敷対決編 】

STAR2 9/4(日)夕方 5:40~ 一挙放送 /9/22(木)よる 9:00~
一挙放送 ほか(全2作品)

特集 深堀り解説コラム
もしもお化け屋敷に殺人鬼が現れたら?
(解説・文/松崎健夫)
 

『HOUSE ハウス』

そもそも<映画>なるものは、<見世物>だった。映画の黎明期、まだ「映画館」という常設の建物内での上映が確立されていなかった時代。映画は労働者向けの娯楽として、サーカスや旅芸人たちのように、全米各地を巡回しながら上映されていたという経緯がある。中でも、発明王トーマス・エジソンが考案した<キネトスコープ>は、箱の中を穴から覗くことで動画を見るという趣向のものだった。“穴を覗く”という不健全な感じのする行為。穴の向こう側に映し出される映像で、観客を熱狂させたのは、「キスする男女」や「裸体」といった、当時の風俗からは不謹慎・不道徳とされていたものだった。見てはならないものが観られる。いわゆる怖いもの見たさのような要素が<映画>には伴っていたのである。
そういった視点で<映画>と<怖いもの>との間には、もともと親和性があったことが判る。<ホラー>というジャンルは、<怖いもの>に特化したものとして、こちらも映画の歴史が始まって間もなく生み出されたジャンルだった。定説では1910年代以降のドイツ表現主義の作品群を源流とし、1930年代になってユニヴァーサル映画が量産した、ドラキュラやフランケンシュタインの怪物などの<モンスター映画>で確立されたとされている。また、<ホラー>というジャンル自体は小説の世界で先行していたこと、或いは、<見世物小屋>という場所における映画の視聴形態からも、親和性があったとも指摘されている。つまり、“驚き”や“恐怖”を訴求させる、お化け屋敷的な要素というのは、元々<映画>に備わっていたということなのだ。

『HOUSE ハウス』

 今回の特集では、「日本のお化け屋敷映画」=『HOUSE ハウス』(77)と「ハリウッドのお化け屋敷映画」=『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』(19)が放送され、日本vs世界のホラー対決が「お化け屋敷」という場をもって繰り広げられる。例えば、トビー・フーパー監督の『ファンハウス/惨劇の館』(81)や、エディ・マーフィ主演の『ホーンテッドマンション』(03)など、「お化け屋敷」をモチーフにした映画は数多存在する。『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』がやや特異なのは、「もしもお化け屋敷に殺人鬼が現れたら?」という『ファンハウス/惨劇の館』への敬愛を感じさせる設定になっている点。幽霊が出没する屋敷を舞台にすることで恐怖を生み出すのではなく、「お化け屋敷」というアトラクションを舞台にしながら、<殺人鬼もの>というホラーの派生ジャンルを両立させているのである。

『マタンゴ』

 一方、大林宣彦監督の長編デビュー作となった『HOUSE ハウス』は、<動物パニック映画>と無縁ではないという点が興味深い。この映画の製作当時、『ジョーズ』(75)が大ヒットしたことをきっかけに、世界的な<動物パニック映画>ブームが起きていた。そのため、シャチや巨大なタコなどに置き換えて、『ジョーズ』の亜流版とも言える作品が粗製乱造されたという経緯がある。実は大林監督も「家が人間を食べてしまう」という奇抜なアイディアを<動物パニック映画>から思いついたのだという。また、「屋敷に得体の知れない何かが取り憑く」という設定は、ダン・カーティス監督の『家』(76)やスチュワート・ローゼンバーグ監督の『悪魔の棲む家』(79)など、昔から製作されているが、『HOUSE ハウス』にはジャック・クレイトン監督の『回転』(61)を引用したような大林宣彦監督の映画的教養を感じさせるのも一興。

 先日、取材でチェコ共和国を訪れた時のことだ。街を歩いていると、真っ赤なTシャツを着た現地の若者とすれ違った。なんとそれは、『HOUSE ハウス』のTシャツだったのである。アメリカのクライテリオン社から発売されたBlu-ray盤のパッケージが施されたインパクトあるデザイン。着ていた御本人が、どういうデザインであるのかを知っていたのかどうかはさておき、遠く離れたチェコの地で、まさか大林監督の『HOUSE ハウス』を目撃するとは夢にも思わなかったのだ。意外なことに、大林宣彦監督の作品は欧米で積極的にはソフト化されておらず、映画祭の場でレトロスペクティブ上映が行われるなどして、これから再評価が高まるのではないかという状況にある。そんな中でも『HOUSE ハウス』が、世界中で観られている作品であることを窺わせる余談である。
 今回の特集には、もうひとつの見立てがある。それは、禁断のキノコを食した者の成れの果てを描いた『マタンゴ』(63)と、南極基地で孤立した隊員たちが地球外生命体と闘う『遊星からの物体X』(82)。日本とハリウッドの「変身人間対決」だ。この二本に共通するのは「一番怖いのは化け物ではなく、人間の方である」という真理。疑心暗鬼が人間の判断を狂わせてゆくメカニズムが、「人間ではいられなくなる」という恐怖によって描かれているのである。『遊星からの物体X』の原作「影が行く」は、ジョン・W・キャンベルが1938年に出版したもの。冷戦時代には『遊星よりの物体X』(51)として一度映画化されている。つまり、当時の赤狩りや冷戦へのメタファーとして、劇中の疑心暗鬼が「隣人は共産主義者なのではないか?」という疑心暗鬼へと繋がっていたというわけなのだ。

【出典】「現代映画用語事典」(キネマ旬報社)
写真:『HOUSE ハウス』(C)東宝 『マタンゴ』(C)東宝

特集「観る。掘る。もっと。」をスターチャンネルで観よう!

2022年10月
隠れた傑作ホラーを観る。掘る。もっと。
第3弾:『パペット・マスター』シリーズ一挙放送

知る人ぞ知る傑作ホラーをお届けするご好評企画が早くも第3弾を迎えました!
誰もが知っているような有名作ではないものの、
みどころに溢れたレアなホラー作品を特集放送。
今回はカルトホラーの傑作シリーズとして人気の高い
『パペット・マスター』シリーズの
第1作~第3作を一挙放送。
第2作と第3作ではそれぞれ新たなパペットが登場するなどみどころも多く、
迫りくるパペットたちの恐怖に震えること間違いなし!
ぜひ一挙放送でお楽しみください。

放送作品ラインナップ

【STAR2 字幕版】

STAR2 10/5(水)~10/7(金)よる 9:00~
3日連続放送/10/22(土)よる 11:10~ 一挙放送 ほか(全3作品)

特集 深堀り解説コラム
小さな殺人鬼『パペット・マスター』は亜流作品などではない
(解説・文/松崎健夫)
 

『FLIRT FLIRT/フラート』

1980年代は、ホラー映画“シリーズ”を活性化させた時代だった。ホッケーマスク姿が印象的な『13日の金曜日』(80)のジェイソン・ボーヒーズ、『エルム街の悪夢』(84)のアイコンである鉄の鉤爪を持った殺人鬼フレディ・クルーガー、白塗りの顔にいくつもの釘が刺さった 『ヘルレイザー』(87)の魔道士ピンヘッド、狩猟を行う『プレデター』(87)の地球外生命体プレデターなど、これらの作品は1980年代に第1作が劇場公開されて、長きにわたってシリーズ作品や関連作品が製作され、ホラー映画の人気キャラクターを生み出したという共通点がある。

それだけではない、『悪魔のいけにえ』(74)のレザーフェイス、『ハロウィン』(78)のマイケル・マイヤーズ、さらには『エイリアン』(79)といったホラー映画のシリーズも、誕生した時代こそ1970年代だったが、シリーズ化されたのは1980年代になってからなのだ。ホラー映画の人気キャラクターが群雄割拠することで、『エイリアンVSプレデター』(04)や『フレディVSジェイソン』(03)など作品同士のクロスオーバーによる対決ものが企画・映画化されるなどに至ったことは周知の通り。

 そんな1980年代に第1作が製作され、シリーズ化を経たうえ2020年代になっても関連作品が製作され続けているのが、今回シリーズ3作品を放送する『パペット・マスター』(89)である。本シリーズは、生命を吹き込まれた小さな人形たちが殺戮を繰り返す姿を、手をかえ品をかえながら描かれてきたという経緯がある。実は日本では劇場公開されず、レンタルビデオ隆盛の時代にビデオ発売扱いだった作品。リメイクやクロスオーバー作品を含めた関連作は、実に14作もある(2022年現在)。『パペット・マスター』は製作から33年が経過した2022年になって初Blu-ray化されるなど、今なおカルト的な人気を誇っている。

『パペット・マスター』

  『パペット・マスター』シリーズを語る上で欠かせない人物がいる。それは、第1作で製作総指揮を担当したチャールズ・バンドである。彼は1983年に、ホラー映画を中心に映画製作を手掛けるエンパイア・ピクチャーズを設立。日本でも劇場公開されたスチュアート・ゴードン監督の『フロム・ビヨンド』(86)や、藤岡弘主演の『SFソードキル』(86)を製作したことで知られる映画会社だった。残念ながら、エンパイア・ピクチャーズは資金調達に失敗して短命に終わってしまう。その後、チャールズ・バンドが新たに立ち上げたフルムーン・エンタテイント(後に“フルムーン・フィーチャーズ”などに社名変更の経緯がある)で、ハリウッドメジャーのパラマウント・ピクチャーズと日本のパイオニア・ホーム・エンタテインメントとが組んで製作した最初の作品が『パペット・マスター』だった。

 当時の経済界はソニーがコロムビア・ピクチャーズを、パナソニックがユニヴァーサル・ピクチャーズ(当時はMCA)を買収して、日本企業が「ハリウッドを買った」とアメリカ国内で非難された時代。また、日本ビクターが『プレデター』のプロデューサーであるローレンス・ゴードンと組んでラルゴ・エンターテインメントを設立したり、『ランボー/怒りの脱出』(85)などをヒットさせながらも経営危機にあったカロルコ・ピクチャーズに対してパイアニアLDCが追加出資するなど、日本とハリウッドの経営的な距離が近くなった時代でもあった。つまり『パペット・マスター』は、日本と無縁の作品ではなく、そのことがカルト的なファンを多く生んだ由縁のひとつだとも思わせるのである。チャールズ・バンド本人も『パペット・マスター』シリーズに思い入れがあるようで、シリーズ8作目『パペット・マスター/悪魔の人形伝説』(03)などで監督を担当している。

『パペット・マスター3/ナチス大決闘』

チャールズ・バンドの一族は、アメリカのエンタメ界と深い関わりがある。例えば、弟のリチャード・バンドは映画音楽家。『宇宙からのツタンカーメン』(82)や『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』(92)などの音楽を手掛け、兄チャールズとは『SFソードキル』や『プリズン』(87)など、数多の映画で組んでいる。そもそも、父親のアルバート・バンドは1950年代にラス・タンブリン主演の西部劇『ヤング・ガン』(56)でデビューした映画監督。息子チャールズが1970年代に映画製作会社チャールズ・バンド・プロダクションを設立した際、大手スタジオと縁のないインディーズ映画を配給する厳しい状況に対してアドバイスし、前述のエンパイア・ピクチャーズ設立時にハリウッド産業との橋渡しをした功労者でもあった。ちなみに、チャールズの息子であるアレックス・バンドは、「Wherever You Will Go」をヒットさせたロックバンド“ザ・コーリング”のボーカルだったりする。

現在『パペット・マスター』は、前年に公開された『チャイルド・プレイ』(88)のヒットにあやかった、小さな殺人者の系譜にあたる作品だと評されている。だが果たして、本当にそうなのだろうか?『チャイルド・プレイ』の前年、チャールズ・バンド率いるエンパイア・ピクチャーズは、犯罪者の魂を封印した人形が登場する『ドールズ』(87)を製作している。さらに、チャールズ・バンド・プロダクションで製作した『デビルズ・ゾーン』(79)の舞台はカラクリ人形館だった。そして、『デビルズ・ゾーン』を監督したのは『パペット・マスター』のデヴィッド・シュモーラーだったりもする。『パペット・マスター』が『チャイルド・プレイ』の亜流版などではない、とする筆者の見立ての証左のひとつなのである。

【出典】『パペット・マスター』
公式サイト https://www.puppetmaster.jp/

特集「観る。掘る。もっと。」をスターチャンネルで観よう!

2022年11月
東南アジア発!空前絶後のアクション映画特集

東南アジアのアクション映画と言えば、ムエタイを取り入れた超絶アクションを想像する人も多いはず。
そんなイメージとはちょっと異なる東南アジアの新時代アクション映画3作品を特集放送。
プラスアルファの要素で見ごたえが増した東南アジア発アクション映画をぜひお見逃しなく!

放送作品ラインナップ

【STAR1 字幕版】

STAR111/7(月)~11/9(水)よる 9:00頃~
3日連続放送(全3作品)

特集 深堀り解説コラム
フィリピン映画は東南アジアの熱い潮流を生む
(解説・文/松崎健夫)
 

『牢獄処刑人』

伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」が、ブラッド・ピット主演で『ブレット・トレイン』(22)として映画化されたように、日本の作品がハリウッドで映像化される例が近年増加傾向にある。例えば、木城ゆきとの漫画「銃夢」をロバート・ロドリゲス監督が映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』(19)、或いは、カプコンの同名ゲームを基にミラ・ジョヴォヴィッチ主演で映画化した『モンスターハンター』(20)。原案となる作品の国際的な知名度を利用しながら、ハリウッドの大物映画人が参加することで、マーケットの照準を全世界に向けた製作が成されていた。


 勿論、アジアの作品がハリウッドで映像化される前例は数多あるが、それらの作品は“アクション”や“ホラー“といったジャンル映画であることが多い。それは、企画に対する”判りやすさ“に依るところも大きく、村上春樹やカズオ・イシグロの小説を除けば、アジアに縁のある作家が創り上げた文芸作品が、ハリウッドで映像化されることは稀だと言える。今回の特集で放送される『牢獄処刑人』(13)はエリック・マティ監督によるフィリピン映画だが、実はこの作品もハリウッドで映像化されているのだ。 『牢獄処刑人』は、刑務所に服役している囚人が特命を受けて一時的に出獄し、標的を仕留めたうえで秘密裏に刑務所へ戻る殺し屋たちがいたという驚きの実話を基にしている。今回の特集で放送される『ミッドナイト・アサシンズ』(17)と併せて、“フィリピン・ノワール”とも評すべきムーブメントの作品。香港で製作された『インファナル・アフェア』(02)が、ハリウッドで『ディパーテッド』(06)として映画化された流れを思い出すかも知れないのは、新たな“ノワール”の潮流が、今も昔も映画ファンを魅力し続けてきたという経緯もあるからだ。

『牢獄処刑人』

 例えば、『リング』(98)や『呪怨』(00)などのJホラー、『the EYE【アイ】』(02)や『Mirror 鏡の中』(03)、『心霊写真』(04)などのアジアで製作されたホラー映画が、立て続けにハリウッドで映画化されたように、フィリピン製のホラー映画『SIGSAW』(08)も斯様な潮流の過程でハリウッドにて映画化されたという経緯がある。その点で『牢獄処刑人』は、アクション場面もさることながら、犯罪映画としての秀逸な設定が評価されているのが特異なのだ。

第66回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映された『牢獄処刑人』は、高い評価を受けたことから、まずは北米での配給・上映につながってゆく。その後、ハリウッドで映画化権が獲得され、『ビースト』(22)のバルタザール・コルマウクル監督によるリメイクがアナウンス。だが、企画は長らく進展せず、現在に至るまで映画化されていなかった。獲得された映画化権が寝かされたままになることは、『AKIRA』実写化などの例があるようにハリウッドではよくある話。だが、エリック・マッティ監督は諦めなかったのである。

2021年にHBOのミニシリーズ(厳密にはHBO Asiaでの製作)として自ら映像化。本来は続編として企画していた「On the Job:Missing 8」(21)を、6話構成、208分の作品として完成させたのだ。劇場公開を予定していたものの、コロナ禍のパンデミックで映画館が閉鎖。一時はリリースの危機に直面した。そんな時、ワーナーメディア・アジアが配給権を獲得したことで、奇しくもミニシリーズとして再編集されることになったのだ。この作品は第78回ヴェネチア国際映画祭でお披露目され、会場のスタンディングオベーションで迎えられている。事件を追うジャーナリストの視点で描かれた「On the Job:Missing 8」の1話と2話は、『牢獄処刑人』を再編集したうえで、映像がリマスターされている。

『ミッドナイト・アサシンズ』

 フィリピンの映画界では、『立ち去った女』(16)のラヴ・ディアス監督や『ローサは密告された』(16)のブリランテ・メンドーサ監督のように、ヴェネチアやカンヌなど国際映画祭の場で評価されている映画人も存在する。『ミッドナイト・アサシンズ』のミカイル・レッド監督も、第29回東京国際映画祭で『バードショット』(16)が上映され、アジアの未来部門で作品賞に輝いている逸材。『ミッドナイト・アサシンズ』は、『ネオマニラ』のタイトルで第13回大阪アジアン映画祭のコンペ部門に選ばれ、<来るべき才能賞>を受賞している。
 意外に思えるかも知れないが、フィリピンは世界の上位に入る映画大国のひとつ。国内では毎年150本前後の映画が製作されている。つまり、毎週3本〜4本の新作映画が劇場公開されている計算になる。この本数は約170本前後の映画を毎年製作しているイタリアやメキシコに近く、ロシアやオーストラリアよりも多い。先述のラヴ・ディアズ監督やブリランテ・メンドーサ監督の作品は 近年ほとんどの映画が日本でも劇場公開されるようになった一方で、キャシー・ガルシア・モリーナ監督のようにフィリピン本国で人気の監督作品はほとんど紹介されてないという現実もある。日本で劇場公開されるフィリピン映画は毎年僅か数本なのだ。

とはいえ、『牢獄処刑人』には脚本のクレジットに“ミチコ・ヤマモト”という名前が確認できるように、日本との繋がりも指摘できる。彼女は日系フィリピン人の脚本家で、現在はエリック・マティ監督夫人でもあり、「On the Job:Missing 8」にも参加している。余談だが、1977年に日本で放送されたアニメ「超電磁マシーン ボルテスV」が、約半世紀を経てたフィリピンで、現在テレビ向けの実写リメイクを撮影している。フィリピンでは1978年に放送され、視聴率58%を記録した人気番組だったという。実は、筆者がいま一番見たい作品のひとつだったりするのである。

「世界の統計2022」総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.htm

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