かつて、日本人の多くがTV洋画劇場を通じて洋画に接していた時代があった。
あの頃にTVで見た、VHSに録画し何度も繰り返し見た、大好きだった作品。
そんな映画は、カットされていてもいいので、当時のその吹替版でもう一度見たい!懐かしい!!
そうした世代の洋画ファンのために、スターチャンネル3がTV吹替バージョンを怒涛の本数集めてきました。
「吹替」を観る。掘る。もっと。
放送作品ラインナップ
OPEN
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OK牧場の決斗
十戒
ゴールデン洋画劇場版
4月19日 午後1:15
日曜洋画劇場版
4月3日 あさ7:45
フォレスト・ガンプ/一期一会
金曜ロードショー版
4月7日 午前 9:30
ゴールデン洋画劇場版
4月16日 午後3:15ほか
OPEN
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放送作品ラインナップ
悪の華/パッショネイト
3月15日 よる9:00
DVD廃盤・中古盤プレミア値
【ストーリー】
ニューヨークのマンハッタンで高級レストランの雇われ支配人として働いているチャーリー。彼には、いつか自分のレストランを経営したいという大きな夢があった。しかしある日、彼のいとこで同じレストランのウェイターとして働いているポーリーが売上金をちょろまかしていることが発覚し、二人ともクビになってしまう。レストラン経営を諦められないチャーリーは、ポーリーが持ち掛けてきた金庫破りの話に乗ることにするが、その金庫の金は、一帯を仕切るギャングのボス、エディの隠し金だった…。
【勝手に解説】
『暴力脱獄』『マシンガン・パニック』など、硬派なエンターテインメント作品で知られる、名匠スチュアート・ローゼンバーグ監督のシャープな演出が冴える犯罪ドラマの秀作。
チャーリーを演じたミッキー・ロークは、甘いマスクと、けだるさと情熱が入り混じった演技で、殺伐としたドラマの中にキラリと光る輝きを放っている。さすが、これが“スター”の存在感というものなのだろう。それまでの出演作では脇役だったミッキーが、初めて主役の座を掴んだのが本作で、その後、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『ナイン・ハーフ』『エンゼル・ハート』と立て続けにヒット作を飛ばすことになる、その“スター性”の開花を、この作品で垣間見ることができるのだ。
今となってはミッキー・ロークの主演作として扱われる本作だが(実際にそうなのだが)、意外にも、冒頭の出演者クレジットで最初に名前が出るのが、ポーリーを演じたエリック・ロバーツ。言わずと知れた、ジュリア・ロバーツの実兄である。子供時代からテレビの仕事で業界で活躍してきたキャリアゆえか、前年に公開された『スター80』での演技が高く評価されたためか、事情はさておき、ミッキーよりもエリックの方が格上扱いだったということだ。しかし、本作のエリックは主役を食ってしまうほどの迫力で見る者をクギづけにする。
頼れるアニキと、問題児の弟分。その場しのぎの短絡的な行動で問題を引き起こす弟分に怒りを募らせながらも、突き放すことができず尻拭いをする面倒見のよいアニキ。そう、本作のチャーリーとポーリーの関係に、スコセッシ監督作『ミーン・ストリート』(1973)のチャーリー(奇しくも同じ役名!)とジョニー・ボーイの姿を重ね合わせる映画ファンも多いのではないだろうか。物語の舞台も同じくニューヨークのダウンタウンだ。ニューヨークと言えば、チャーリーがアパートの屋上にある鳩小屋のそばでポーリーと話をするシーンが登場するが、エリア・カザン監督の名作『波止場』(1954)でマーロン・ブランド演じるテリーが屋上の鳩小屋で恋人に心の内を吐露する、あの素晴らしい名場面を彷彿とせずにはいられない。
本作は犯罪ドラマの形を借りた青春ドラマというのが正しい。しかし、犯罪ドラマとしても見応え十分である。ギャングのボスを演じたバート・ヤング、その手下を演じたトニー・ムサンテといったイタリア系の俳優たちの貫禄たっぷりの演技、金庫破りのプロを演じたケネス・マクミラン、ふてぶてしい警部を演じたM・エメット・ウォルシュ、殉職した刑事の肝っ玉のすわった母親を演じたジェラルディン・ペイジなど、脇を固める演技巧者たちの一挙手一投足に、“脇役ファン”は唸らされること必至だ。渋いギャング映画を見た気分に浸れるにちがいない。紅一点、若き日のダリル・ハンナの肢体も、また別の意味で見どころである。
華やかな魔女たち
3月19日 よる9:00
未ソフト化
【ストーリー】
<第1話>…「疲れきった魔女」 監督:ルキノ・ヴィスコンティ
世界的な人気女優グロリアは、親友の別荘でのパーティに招待され、お忍びで雪深い山奥の別荘を訪れる。マスコミの目を逃れ、ひと時のプライベートな時間を過ごすつもりが、パーティに集まった女性客たちの好奇と嫉妬の的となり、男だちは彼女の美貌に色めき立つ。そしてグロリアには、ある“秘密”があった…。
<第2話>…「市民気質」 監督:マウロ・ボロニーニ
ローマの大通りで交通事故が発生。渋滞に巻き込まれた美人ドライバーは、事故で瀕死の重傷を負ったトラック運転手を病院まで搬送すると申し出、事故の見物人たちの賞賛を浴びつつ、負傷した男を乗せて猛スピードで発進する。ところがいつしか車はあらぬ方向へと進路を変える。彼女の目的とは…?
<第3話>…「月から見た地球」 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
妻を亡くして悲嘆に暮れる男とその一人息子。再婚相手を探して1年がたったころ、ついに美しい女性に出会い、首尾よく結婚することに。ところが男は貧しく、家はボロボロの掘立小屋。ある日、男は立派な家を買おうと一計を案じ、妻と息子に協力させて、金を稼ぐための大芝居を打つが…。
<第4話>…「シシリア娘」 監督:フランコ・ロッシ
シシリアの小さな村に暮らす娘ヌンツィアは、ある若い男に袖にされたと嘆き悲しんでいた。それを見た父親は、娘をもてあそんだ相手に罰を下そうとの男の名を言えと娘に詰め寄るが、彼女はなかなか男の名を明かそうとしない。しかし、ついに娘が男の名を告げると、怒り燃えた父親は銃を手に家を飛び出し…。
<第5話>…「またもやいつも通りの夜」 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
かつて情熱的な恋愛の末にカルロと結婚したジョヴァンナは、今や自分にまったく興味を示さなくなった夫に欲求不満を抱いていた。毎日、仕事から戻り、疲れてすぐに寝てしまう夫。ジョヴァンナは結婚した頃の情熱的な夫を思い出しては虚しい思いに沈むうち、やがて空想の中で夫への反撃に出る…。
【勝手に解説】
イタリア映画界の名匠・巨匠5人の監督が、“魔女”をテーマに、それぞれ独自のイマジネーションを羽ばたかせて描いた、5話オムニバスのレア作品。ルキノ・ヴィスコンティ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ヴィトリオ・デ・シーカといった、世界的なビッグネームが参加しているのが興味をそそる。共通のテーマに沿って複数の監督が描いた短編をセットにしたイタリア映画のオムニバス作品といえば、『ボッカチオ‘70』(1962)が有名だが、こちらは、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ヴィトリオ・デ・シーカ、マリオ・モニチェッリの4人の監督による4話オムニバス作品。こうして見ると、格調高い芸術的な作風で知られるヴィスコンティにも、“お遊び”感覚の軽いフットワークがあったのかと思うと、なんとなく微笑ましい。
そんなヴィスコンティが手掛けたのが、第1話「疲れきった魔女」。ひとつ言い忘れたが、このオムニバス作品の最大のウリであったろうと思われるのが、それぞれのエピソードの中で描かれる5人の“魔女”(と言っても魔法使いではなく、さまざまなタイプの女性が持つ“魔性”の喩え)を、当時のイタリア映画界きっての人気美人女優だったシルヴァーナ・マンガーノがすべてひとりで演じているという趣向である。このアイデアのからくりはというと、実はこの作品のプロデューサーは、かの有名なディノ・デ・ラウレンティス。70年に及ぶキャリアで150本以上の作品を世に送り出した伝説の映画プロデューサーである。その彼の妻だったのがシルヴァーナ・マンガーノだ。つまり、職権乱用(?)で自分の妻のプロモーション映画をこしらえた、というわけである。その意味では伊丹十三の先達と言えるだろう。というわけで話は第1話に戻るが、このエピソードで面白いのは、マンガーノ演じる世界的大女優グロリアの夫が映画プロデューサーという設定で、仕事とマスコミに追い回されて疲れ切ったグロリアを心配するどころか、「人気のあるうちにもっと仕事をしろ!」と叱咤する、金欲にまみれたひどい夫として描かれているところ。ヴィスコンティのこの明らかに意地悪で皮肉なユーモアを、プロデューサーであるラウレンティスがよくもOKしたものだと思うが、果たして、その心境はいかばかりだったのだろう。確信犯だったとすれば、さすが伝説の大プロデューサーの人並外れた器というほかない。ところで、物語の舞台となる別荘の若い使用人のチョイ役で、ヘルムート・バーガーが映画デビューを飾っている。さすが美少年鑑定士(?)のヴィスコンティ、未来の傑作の主役を、この時にちゃっかり手に入れていたのである。
第2話は、わずか6分ほどのコンパクトな短編。ミステリアスな展開の最後に待ち受ける、あっけらかんとした“残酷”なオチが素晴らしい。
第3話は、『アポロンの地獄』(1967)、『テオレマ』(1968)、『豚小屋』(1969)など、強烈な映像表現で数々の問題作を世に出した、異才ピエル・パオロ・パゾリーニ監督作。さぞやエグい内容になっているかと興味津々だが、さにあらず。道化師を思わせるひょうきんな父子が繰り広げる“再婚活”の顛末を描いたコミカルな作品だ。とはいえ、父子の奇天烈な容姿風貌とドタバタ・コメディを思わせるオーバー・アクションな演技、突然挿入される意味不明な登場人物、カラフルな色彩感覚等々が相まった一種独特のシュールな世界は、見る者を不思議なアナーキズムとアナクロニズムでじわじわと圧倒する。パゾリーニの秘めたる“狂気”の片鱗を感じさせるかのような、異次元的怪作である。
第4話は、これまた5分弱の超短編作品。マフィアで知られるシシリア地方だが、そんなシシリア人の“性(さが)”を痛烈に皮肉った内容。あまりに痛烈すぎて笑えないところがミソか(?)
第5話の見どころは、なんといってもクリント・イーストウッド。『荒野の用心棒』(1964)、『夕陽のガンマン』(1965)、『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(1966)のマカロニ3部作で、イタリア国内でもすでに大人気を博していたという背景があってこその、出演オファーだったに違いない。イーストウッドとしても、やっと人気に火が付いたばかりの時期で、来るもの拒まずの気前の良さで引き受けたと思われるが、こんな役どころのコミカルなイーストウッドが見られるのは、ファンには貴重なチャンス。マンガーノ演じる妻が妄想の中でさまざまなシチュエーションに応じて変身するさまは、さながら彼女の魅力をアピールせんがための“コスプレ・ショー”の観があるが、その中でイーストウッドが黒ずくめのガンマン姿で銃をバキューンと撃つサービス・シーンもしっかり用意されていて、西部劇ファンは思わずニンマリすること間違いなしだ。それにしても、スマートなスーツに身を包み、栗色の綺麗な髪を七三に分けた、若きイーストウッドのイケメンぶりは、ついつい男も惚れてしまう麗しさである。
マリアンの友だち
3月22日 よる9:00
未DVD•BD化
【ストーリー】
名門のお嬢様学校に通う14才の少女マリアンは、学校からの帰り道で見知らぬ同級生に出会う。彼女の名前はヴァル。転校してきたばかりで、これまで2度も退学になったという、自称“問題児”。意気投合した2人は、ある日、公園で遊んでいる最中、物陰で抱き合っている男女にちょっかいを出して、男に追い返される。男の名前はヘンリー・オリエント。プロのピアニストで、人妻を口説くのが生きがいの中年プレイボーイ。ところが後日、クラシック演奏会で偶然ヘンリーのピアノ演奏を聴いたヴァルは、彼を熱烈に好きになってしまう…!
【勝手に解説】
『明日に向って撃て!』『スティング』など、ニューアメリカン・シネマを牽引した名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督が、好奇心旺盛な思春期の少女たちが巻き起こす恋の騒動を描いた、チャーミングな佳作。
“グッド・オールド・タイム=古き良き時代”へのノスタルジーと現代的な感覚が融合した作風で、映画界に新風を吹き込んだヒル監督。監督3作目にして、日本で初めて劇場公開された本作は、ヌーヴェル・ヴァーグを思わせる瑞々しい雰囲気を漂わせ、のちのニューアメリカン・シネマの担い手として開花する才能の息吹を感じさせる、興味深い作品である。
その瑞々しさを醸し出しているのが、マリアンを演じたメリー・スピースと、ヴァルを演じたティッピー・ウォーカー。ともに、これが映画初出演となる新人で、演技慣れしていない初々しさが、逆に等身大の少女のキラキラした魅力をキャラクターに見事に吹き込んだ。撮影で初めて顔を合わせてすぐさま意気投合したというが、そんな2人の仲良しぶりが、実際の演技からも伝わってくる。快活で積極的なマリアンと、何不自由ない裕福な令嬢だが心に寂しさを抱えるヴァル。性格も家庭環境も違う2人だが、ヴァルの“夢”を叶えるためにお互いに協力し、親友の絆で結ばれていく姿は、やがてロイ監督の出世作となる『明日に向って撃て!』(1969)の主人公、ブッチとサンダンスの名コンビのルーツを見るようでもある。
ちなみに、2人ともにその後は女優としての活躍には至らなかったが、メリー・スピースは長じてメディア業界・政財界で幅広く活躍。レーガン政権下では、ホワイトハウスで広報担当の特別補佐官として手腕をふるい、その後、ビジネス・コミュニケーションのコンサルティング会社を立ち上げた。
本作の原題は「The World of Henry Orient」。ピーター・セラーズ扮するプレイボーイのピアニスト、ヘンリー・オリエントが主人公だと思わせるタイトルだが、実際の主人公は2人の少女マリアンとヴァル。『マリアンの友だち』は、実際の内容に即した良心的(?)な邦題だ。原作者のノーラ・ジョンソンは、『怒りの葡萄』『百万長者と結婚する方法』など多くの名作映画の脚本家として成功を収めたナナリー・ジョンソンの実娘。実は彼女、再婚した父ナナリーが暮らすビバリーヒルズの豪邸と、実の母親が暮らすマンハッタンのアパートを行き来する少女時代を過ごし、その経験を元にこの原作を書き上げたのだという。両親と共に過ごすことができなかった寂しさが、ヴァルという少女のキャラクターに投影されているのは想像に難くない。本作ではノーラとともに父ナナリーが共同脚色を担当しているが、彼の心中や、さぞ複雑なものがあったのではないだろうか…。
少女2人が巻き起こす無邪気な騒動の行方をポップでユーモラスに描きながらも、親子の愛情を考えさせられるシリアスなテーマも織り交ぜ、思春期の少女の心の成長を温かい眼差しで描いた本作。その“甘辛”の絶妙なブレンドが、ホロ苦くも爽やかな後味を残してくれる。
追撃のバラード
3月26日 よる9:00
未ソフト化
【ストーリー】
下級保安官のバルデスはある日、荒野の真ん中で銃を持った男たちの集団に遭遇する。それは、町の有力者タナーと彼が率いる部下たちで、小屋に立てこもった黒人の殺人容疑者を仕留めようとしているのだった。独断で小屋へと近づき、黒人男と話をしたバルデスは、実は彼は潔白だと知る。しかし次の瞬間、タナーの部下が突然発砲し、黒人男も応戦して発砲、身を守るためにバルデスが発砲した弾が当たり、黒人男は絶命する。人違いで死んでしまった男の未亡人を哀れんだバルデスは、せめて彼女に見舞金を渡そうと、タナーに金を出してくれるよう嘆願するが…。
【勝手に解説】
名優バート・ランカスターが、無実の罪で死んだ男の未亡人への見舞金を工面しようと、冷徹非情な有力者一味に命がけの戦いを挑む実直な老保安官を演じた、異色西部劇の激レア作品。
何といってもグッとくるのが、老保安官バルデスが命を懸けてまで戦う、その“理由”だ。人違いで殺されてしまった黒人男と、後に残された先住民の妻を哀れみ、せめて未亡人に見舞金を持たせてやろうと思い立った、人情に厚いバルデス。しかし、貧しいバルデスにはまとまった金の貯えなどなく、そこで白羽の矢を立てたのが、町の有力者タナーだった。なぜなら、そもそもタナーが人違いで無実の男を追い詰めさえしなければ、この悲劇は起こらずにすんだのだから。ところで、ここで素朴な疑問が沸く。無実の黒人男を殺したのは、たとえ正当防衛といえども、バルデスなのである。なんという矛盾。しかし、そんなことはバルデスは気にしない。そこがイイのだ。なんの作為もなく、ただただ気の毒な未亡人への思いやりから、当面の生活費を工面してやりたい、という善意に突き動かされて、タナーのもとへと急ぐバルデス。ところが、というか、当然というか、タナーは「殺したのはお前じゃないか」ということでバルデスの提案を無視し、それでも引き下がらないバルデスに、部下に命じて半死半生の重傷を負わせる。さあ、怒ったバルデス! 九死に一生を得たバルデスの、執念の戦いがついに幕を開けるのである!
このように説明すると、まるでバルデスの“愚直さ”を茶化しているように聞こえるかもしれないが、しかし、それは違うのだ。自らの信念を愚直なまでに貫き通そうとすると、人はすべからく“バカ”になってしまう。行き過ぎたヒロイズムは、周囲のヒンシュクを買うのである。しかし、その愚かさの中にカッコ良さを見出す人々もいるだろう。この映画は、見る者の心の片隅に“バルデスがいるかどうか”を問いかける映画なのである。
本作はもともと、タナー役にバート・ランカスター、バルデス役にマーロン・ブランドが想定され、シドニー・ポラックが監督する予定だったらしい。しかし、ランカスターが、1970年代にパニック映画の一大ブームを巻き起こすきっかけとなる『大空港』への出演が決まって製作延期となり、その後、ランカスターがバルデスを演じることに変更された。マーロン・ブランドのバルデス役にも興味津々たるものがあるが、しかし、ランカスター演じるバルデスの味わいには格別なものがある。ブランドだったら、ランカスターが醸し出した“愚直さ”をバルデスのキャラクターに滲ませることはできなかったにちがいない。バート・ランカスターは脚本について、次のように語っていたという。「私はゴロツキの役でも英雄の役でも構わない。もしその役で言いたいことが言えるならば、私は物事に対する私の関心を表現できるものを作りたいのだ」と。ランカスターのフィルモグラフィーを紐解くと、『雨を降らす男』(1956)、『エルマー・ガントリー/魅せられた男』(1960)、『終身犯』(1961)、『追跡者』(1970)など、どこまでも己の信念を貫く、正気と愚直の境界スレスレを生きる男を繰り返し演じていることに気づかされる。『追撃のバラード』で彼が“言いたかったこと”は、おのずと明らかだろう。
本作の原作は、『ジャッキー・ブラウン』(1997)、『アウト・オブ・サイト』(1998)など、ハードボイルド・タッチの作風で知られる、エルモア・レナードの同名小説。チャールズ・ブロンソン主演の復讐劇『マジェスティック』(1974)も彼の原作の映画化作品だが、スイカ農園を営む主人公マジェスティックが、仕事を横取りしようとする悪党一味に収穫したスイカをズタズタに破壊されたことから、たった独りで執念の復讐に赴く姿を描いた、70年代アクションの傑作だ。「何もスイカごときで命を懸けなくても」という気もするが、そこが“たかが、されど”で、マジェスティックにとってはスイカが彼の人生そのものなのである。“スイカの恨み”、恐るべし。マジェスティックの愚直なまでのスイカの恨みは、『追撃のバラード』のバルデスの“見舞金への執念”に、どこか通じるものがある。ところで、西部劇ファンなら忘れてはならないのが、レナード原作による傑作西部劇『決断の3時10分』(1957)だ。2007年にラッセル・クロウ主演で『3時10分、決断のとき』としてリメイクされたことも、まだ記憶に新しい。この作品で鮮烈な印象を残すのが、敵対する男同士が迎える、男泣き必死の“粋”な結末だ。果たして最後、バルデスはその一途な思いを遂げることができるのか。『決断の3時10分』を彷彿とさせる、意表を突く鮮やかな結末は、ストップモーションの映像と相まって、格別の余韻を残す名場面となっている。
怒りの刑事
3月24日 よる9:00
劇場未公開・ソフト未発売
【ストーリー】
イギリスのとある地方都市で、少女誘拐事件が発生する。警察の捜査が始まり、やがて刑事のジョンソンは林の中に置き去りにされた少女を発見するが、犯人の手掛かりは残されていなかった。そんな中、パトロール中の警官が、職務質問をした怪しい男を連れて警察署に戻ってきた。その男を真犯人と睨んだジョンソンは尋問を始めるが、男は無実の主張を繰り返すばかり。業を煮やしたジョンソンは次第に苛立ち、尋問はエスカレートしていく…。
【勝手に解説】
『十二人の怒れる男』(1957)で華々しいデビューを飾り、『未知への飛行』(1964)、『セルピコ』(1973)、『狼たちの午後』(1975)、『評決』(1982)など、その後も一貫して“社会派”の傑作、問題作を世に送り出した、名匠シドニー・ルメット監督による、刑事ドラマの激レア作品。
主人公のジョンソン刑事を演じるのは、昨年惜しまれつつ世を去った名優ショーン・コネリー。コネリーといえば、とにもかくにも、「ボンド。ジェームズ・ボンド」。その後の主なフィルモグラフィーを見ても、渋くてカッコいいヒーロー役で数々の名作、ヒット作に出演し、世界中の映画ファンを楽しませてくれた正義のスーパー・スター、そんなイメージが定着しているのではないだろうか。そんなショーン・コネリーの“陽”の固定イメージがガラガラと音を立てて崩れ去り、“陰”の一面が全面に押し出された本作は、彼のファンにとってはある意味でショッキングかもしれないが、逆にそこが大きな見どころと言えるだろう。
俳優にとってイメージが固定してしまうことは、損得が表裏一体となった諸刃の剣である。聞くところによると、ショーン・コネリーもまた、ジェームズ・ボンド役を降板した際、ボンドのイメージが付いて回ることを大いに嫌い、イメージチェンジを図ろうとしたらしい。そんなわけで、コネリーが最後のボンド役を演じた『007/ダイヤモンドは永遠に』が1971年作品、そしてその翌年の1972年に出演したのが、本作『怒りの刑事』というわけである。「なにもそこまで変わらなくても…」というファンの声が聞こえてきそうな180度の変わりように、さすがに日本の配給会社も二の足を踏んだのか、日本では劇場未公開の憂き目にあってしまった。しかし、それは仕方がないとしても(むしろ未公開の判断は商業的には正しかったのだろう)、ショーン・コネリーのイメチェン作戦は本気だったのである。本作の次に出演した作品は、ディストピアSF映画の怪作とも珍作とも、はたまた傑作とも言われる『未来惑星ザルドス』(1974)。ショーン・コネリーが、いわゆる“フンドシ”(失礼!)コスチュームに身を包んだ未来惑星の戦士に扮した、伝説の逸品だ。よほど、ボンドの呪縛から逃れたかったに違いない。
ところで、本作の中身はというと、もちろんショーン・コネリーのイメチェン目的に作られたわけではない。なにしろ、シドニー・ルメット印である。つまり、マジである。長年にわたる幾多の凶悪事件に向き合ってきた刑事の胸中に鬱積した犯人憎悪の感情が、容疑者への執拗な取り調べへとエスカレートしていくさまは、見る者を“感情”と“理性”のはざまで引き裂かずにはおかない。“感情”とは“勧善懲悪”であり、“理性”とは“冤罪の可能性”である。昨今ニュースで取り上げられる、“警察による自白強要の実態”や“取り調べの不透明性”といった問題は、今に始まったことではない。“正義の追求”と“冤罪の回避”のせめぎ合いにいち早く着目したルメット監督の問題提起は、今日の問題として、さらに未来の問題としてありつづけるのだろう。
灰色に沈んだ町の寒々とした町の光景。取り調べ室の冷たい壁。苦渋に満ちたショーン・コネリーのソリッドな佇まい。一貫して漂う張り詰めた空気が、架空の刑事ドラマをリアルな緊張感で浸していく。本作を評したこんなコメントに出くわした。「ブルース・ウィリスやメル・ギブソンがロサンゼルスの半分を吹き飛ばしてしまうような刑事ドラマに食傷気味な人にオススメだ」。まさに、その通り。
再放送作品
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共感シアター「おうちDeシネマ」に清水崇監督&白石晃士監督が生出演!
『牡丹燈籠』無料放送を同時視聴しよう!
スターチャンネル「映画は死なず!」と、共感シアターのコラボ企画第2弾!
日本と世界のホラー映画に焦点を当てる企画「日本VS世界のホラーを観る。掘る。もっと。」にて、1968年公開の傑作ホラー映画『牡丹燈籠』がスターチャンネル無料放送されるにあたり、オンエアーを観ながら同時視聴鑑賞会を開催!
ゲストには、ホラー映画の同時再生にふさわしく『呪怨』、『樹海村』の清水崇監督と、『貞子VS伽椰子』、『不能犯』の白石晃士監督という日本映画界が誇るホラー映画監督2人が生出演!
20:30の番組開始から、日本の古典ホラーの演出手法や歴史などについて語りつつ、
21:00からのスターチャンネルの無料放送『牡丹燈籠』を、日本を代表するホラー監督と一緒に楽しもう!
※共感シアターの番組内では本編映像は流れません。スターチャンネルの無料放送を同時にご視聴いただきながらご参加ください。
共感シアター「おうちDeシネマ」
映画ファンがみんなで楽しみを分かち合う場所「共感シアター」がお贈りする、映画同時再生企画「おうちDeシネマ」。
出演者と視聴者が同じ時間に同じ映画を“同時再生”し、リアルタイムコメントで盛り上がる、視聴者参加型番組。
共感シアター公式Twitter:https://twitter.com/bals_theater
共感シアター公式YouTube:https://www.youtube.com/user/
MOVIEMARBIE
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放送作品ラインナップ
ブルース・リー/死亡遊戯
1月17日 午前10:45 ほか
ブルース・リー/死亡の塔
1月17日 ひる12:45 ほか
ドラゴン/ブルース・リー物語
1月17日 午後2:30 ほか
メイド・イン・ホンコン
1月17日 夕方4:40 ほか
友は風の彼方に
1月17日 夕方6:40 ほか
男たちの挽歌
1月17日 よる9:00 ほか
特別番組
『香港懐旧電影/好きです、香港。』
1月特集「香港映画を観る。掘る。もっと。」にあわせたオリジナル番組。『男たちの挽歌』『恋する惑星』『メイド・イン・ホンコン』3本の映画を、現地・香港から、香港人YouTubeの街案内×香港人映画評論家の解説でお届け。今こそ日本から、声を大にして叫びたい、「好きです、香港。」と!
前編『男たちの挽歌』
中編『恋する惑星』
後編『メイド・イン・ホンコン』
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放送作品ラインナップ
ハート・ロッカー
12月25日 よる8:30
ミュンヘン
12月25日 よる11:00
トランスフォーマー
12月26日 よる11:20
トランスフォーマー/リベンジ
12月26日 深夜1:50
デイ・アフター・トゥモロー
12月27日 よる9:00
PLANET OF THE APES/猿の惑星
12月27日 よる11:15
ボーン・アイデンティティー
12月28日 よる9:00
チャーリーズ・エンジェル(2000)
12月28日 よる11:15
ターミナル
12月29日 よる9:00
グラン・トリノ
12月29日 よる11:15
バッドボーイズ2バッド[完全版]
12月30日 よる9:00
グラディエーター
12月30日 よる11:45
ヘルボーイ[ディレクターズ・カット版]
12月31日 よる9:00
G.I.ジョー
12月31日 よる11:30
エターナル・サンシャイン
12月1日 あさ8:00 ほか
きみに読む物語
12月7日 夕方6:45 ほか
マンマ・ミーア!
12月9日 夕方5:00 ほか
イーグル・アイ
12月8日 深夜4:45 ほか
ウォーク・ザ・ライン/君につづく道[エクステンデッド版]
12月8日 夕方6:15 ほか
ALI アリ
12月9日 午後2:15 ほか
サンキュー、ボーイズ
12月2日 夕方6:30 ほか
恋するレシピ ~理想のオトコの作り方~
12月4日 午前10:15 ほか
モンスター
12月3日 ひる12:00 ほか
グッドナイト&グッドラック
12月4日 あさ8:30 ほか
プロヴァンスの贈りもの
12月20日 ひる12:15 ほか
バッド・ルーテナント
12月5日 よる11:00 ほか
メイド・イン・マンハッタン
12月8日 よる9:00 ほか
2番目のキス
12月5日 よる9:00 ほか
特別番組
『映画秘宝STARトーク ボクらのゼロ年代映画』
映画秘宝とコラボレーション。ゼロ年代映画を見て育った日本映画界の第一線で活躍する監督が、あの時代の映画について、トップクリエイターの観点から振り返る。白石晃士監督、入江悠監督、小林勇貴監督そして映画秘宝岩田編集長の深掘りトーク番組。
スターチャンネルは、BSハイビジョン3チャンネルおよび
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