STAR EX

観る。掘る。もっと。

 

映画をより深く楽しむための特集企画。
月替わりで、あまり知られていない傑作・名作の掘り起こしや、
なかなかお目にかかれなかったレアな逸品の掘り起こし特集などに加え、
これら作品の魅力を紐解き、深堀りするコラムほか特別企画なども展開し、
様々な映画の楽しみ方を探索していきます。

2023年1月
知られざる驚きの実話映画を観る。掘る。もっと。

事実は"映画"より奇なり!?実話をベースに、
知られざる驚きのストーリーが描かれる映画6作品を特集放送!どうぞお楽しみに!

放送作品ラインナップ

【STAR1 字幕版】

STAR11/8(日)ひる 12:00~ 一挙放送/
1/16(月)~1/20(金)よる 9:00頃~ 5日連続放送(全6作品)

特集 深堀り解説コラム
企画不足が“実話”の映画化を増殖させる
(映画評論家・松崎健夫)

『ドリーム』

 日本映画に「原作ものが多い」と言われるようになって久しい。小説や漫画だけでなく、<劇場版>との冠のついたテレビドラマの続きとなるような作品など、映画オリジナルの作品ではなく、何らかの“原作”を基に劇場公開させた作品が多くなっているという傾向に対して異論はないだろう。同時に、「原作ものが多い」との感想には、日本映画界に対するやんわりとした揶揄も含まれている感もある。国内で活躍する映画監督たちからは、以前から「オリジナル脚本では企画が通らない」という嘆きにも似た声を耳にするし、脚本家たちからも「オリジナル脚本を書いても映画にならない」といった同様の声を耳にする。監督や脚本家たちが、どちらかというとオリジナル脚本を望んでいるように感じる由縁だ。

 映画のために書かれたオリジナル脚本の企画が通りにくい現状には、いくつかの理由がある。ひとつは、日本映画のマーケット(市場)が国内を中心にしている点が挙げられる。例えば、人口が数千万に満たないヨーロッパの国々。国産の映画をたとえ国民全員が観たとしても、その売り上げ(興行収入)から逆算すれば、自ずと小規模の映画しか製作できないという切実な事情がある。潤沢な製作費を投入するような裏付けが乏しいのだ。それゆえ、国外のマーケットを意識せざるを得ないという現実もある。このことは、ヨーロッパ映画に合作が多いこととも無縁ではない。

 また、お隣の韓国では、『パラサイト 半地下の家族』(19)がカンヌ国際映画祭で最高賞に輝き、アカデミー賞でも作品賞に輝くなど、批評的にも興行的にも国際的な成功を収めている印象がある。しかし、その根底にも国外マーケートへの意識が指摘できる。例えば、韓国の総人口が5147万人(2021年の統計)であることは、日本の人口の半分にも満たないことを意味する。つまり韓国においても、国内のマーケットだけでは潤沢な資金を製作費に投入する裏付けが乏しいのだ。映画のみならず、テレビドラマや音楽の世界においても国際的な人気を掴んだ韓国のエンターテインメント界。斯様な成功に対して羨望するような報道を日本のメディアでは散見するが、そこには地政学的な問題も介在しているのである。

 ふたつめは、何らかの<原作>があることが、興行収入に対する裏付けを示せるという点が挙げられる。例えば、小説や漫画が原作となっている場合。書籍の発行部数は、おおよその購買者や読者の数でもあるため、映画化した際の観客動員を予想しやすくなるデータに変換される。またテレビドラマであれば、視聴率がその参考になり得るだろう。その点でオリジナル脚本は、観客動員を予想・算出するための裏付けに乏しいのだ。今回の特集では「知られざる驚きの実話」を映画化した作品がラインナップされている。この<実話>というモチーフもまた、観客動員の裏付けとなっている点が重要なのである。

『ゴヤの名画と優しい泥棒』

 『ゴヤの名画と優しい泥棒』(20)は、1961年にロンドンの国立美術館からフランシス・デ・ゴヤの名画が盗まれた実際の事件を描いた作品。後半は裁判劇となるのだが、超法規的とも解釈できるような粋な判決のゆくえは、約50年前の出来事ながら痛快だ。また、『クーリエ:最高機密の運び屋』(20)は、<キューバ危機>の回避に貢献したスパイの知られざる真実を描いた作品。スパイ経験のないイギリス人セールスマンが、核戦争勃発を阻止したという紙一重の事実には驚愕するばかりだ。ラインナップのうち、『ドリーム』(16)や『モーリタニアン 黒塗りの記録』(21)は、映画化の際に基となったノンフィクションや手記などの<原作>があるのだが、『ゴヤの名画と優しい泥棒』と『クーリエ:最高機密の運び屋』には原作となるものがない。重要なのは、<実話>だという点にある。

『クーリエ:最高機密の運び屋』

 <実話>には、新聞や雑誌で記事になり、話題となったものも多い。つまりこのことは、小説や漫画のような<原作>同様の“知名度”を導き、企画にゴーサインを出すか否かの判断材料になっているのである。例えば、『クーリエ:最高機密の運び屋』のように、<キューバ危機>という歴史的事実を題材にしながら、そこへ「知られざる事実」が付加されることで、たとえ書籍化されてなかったとしても、<実話>そのものの“知名度”を観客動員の裏付けとする事例があるのだ。加えて、ISISとSWATとの市街での攻防戦を描いた『モスル あるSWAT部隊の戦い』(19)のように、雑誌「ニューヨーカー」に掲載された記事を原案に映画化したという特異な経緯まである。ハリウッド映画には、存命の政治家を描く(日本では映画化困難と思えるような)作品が存在するが、これらの作品は「たとえ存命の人物であっても、記事が原案であれば映画化できる」というロジックによって製作されてきた背景もある。

 アカデミー賞では、映画のために書かれたオリジナル脚本に対する<脚本賞>と、小説や戯曲、ノンフィクションなどの原作を基にした脚本に対する<脚色賞>があり、明確に部門が分けられている。そもそも日本映画界だけでなく、実はハリウッド映画界においても「ネタ不足」と言われて久しいという現状もある点も重要だ。過去10年の北米年間映画興行ベストテンを俯瞰すると、マーベルやDCのアメコミ作品、シリーズ物などの続編、或いは、リメイク作品ばかりがランキングされていることが判る。『ズートピア』(16)などのピクサー作品を除くと、実写では『TENET テネット』(20)や『ゼロ・グラビティ』(13)くらいしか(原作のない)オリジナル脚本の作品は見当たらない。その危機感こそが、(原作のない)<実話>に目が向けられている由縁でもあるのだ。
特集「観る。掘る。もっと。」をスターチャンネルで観よう!

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