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「特集:ジャンゴたち!」にあわせて、これだけは見るべし!! ジャンゴ映画6本を解説 [後編] original image 16x9

「特集:ジャンゴたち!」にあわせて、これだけは見るべし!! ジャンゴ映画6本を解説 [後編]

解説記事

2023.08.02

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ドラマ『ジャンゴ ザ・シリーズ』独占日本初放送にあわせて、この夏、ドラマではなく映画の“ジャンゴ”も満を持して特集放送。玉石混交あまたある“ジャンゴ”映画の中でも、まず見ておくべき作品はどれか!? 我々スターチャンネルは、マカロニ・ウエスタン研究家のセルジオ石熊氏にラインナップ策定に協力をいただいた。7月の前編に続いてセルジオ石熊氏みずからが推薦作を解説する映画コラムの今回は第2弾。8月放送分『情無用のジャンゴ』『待つなジャンゴ引き金を引け』『ジャンゴ対サルタナ』をお届け!

目次

■マカロニ・ウエスタン版“キングコング対ゴジラ”!? 『ジャンゴ対サルタナ』本邦初登場!

「金になりそう」な「西部劇」を「アイディアいただき」で作り上げるのがマカロニ・ウエスタンの神髄だとすれば、そんなマカロニ精神を見事に具現化した一本が『ジャンゴ対サルタナ』[1970]だ。

「サルタナ」とは、アンソニー・ステファン主演のマカロニ・ウエスタン『砂塵に血を吐け』[1966]に登場した悪役の名。あいかわらず派手さのない表情・演技で目立たないステファンに対して、「サルタナ 残酷な支配者 自らの掟を残虐に下す ムチは彼の舌 銃は彼の口 憎しみは彼の神」と予告編で紹介されたキザでクールな殺し屋サルタナのカッコよさは観客の心をがっちりつかんだ。演じたのは旧ユーゴスラヴィア(クロアチア)出身で熱心な創価学会信者のジャンニ・ガルコ(ジョン・ガルコ名義)。おかげで、死んだはずのサルタナは生き返り、ジャンニ・ガルコは『さすらいの盗っ人野郎・サタナ』[1969](テレビ放映時にサルタナを間違って表記したらしい)、『サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~』[1970]など続けて5本の「サルタナ」シリーズに主演した。日本では劇場公開されたことがないのでイマイチ無名だが、ヨーロッパ、特に西ドイツ・北欧での人気は大変なものだったらしい(ちなみに、ややこしいがジャンニ・ガルコは『二匹の流れ星』[1967]で「ジャンゴ」を演じている)。
 
 というわけで、日本映画『用心棒』[1961]」を西部劇に翻案したのが『荒野の用心棒』[1964]なら、こんどは『キングコング対ゴジラ』[1962]を「ジャンゴ」と「サルタナ」でウエスタン対決させようじゃないか、と企画された(のかもしれない)のが『ジャンゴ対サルタナ』[1970]だ。もちろん、誰にも許可などは取っていないので、今まで日本では一切公開されていなかった激レア作だ。

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 驚いたことにここでのジャンゴは、孤高のガンマンではなく、賞金稼ぎ軍団を率いるリーダーだ。が、町へ戻ると、銀行に勤めていた弟(!)スティーヴが、縛り首になっていた! 犯人は流れ者の殺し屋サルタナと聞かされたジャンゴは復讐を誓い、サルタナを追う……。

 ジャンゴ(トニー・ケンドール)に弟がいたのには驚いたが、銀行員だという設定には、ビックリしたなもう。サルタナ(ジョージ・アーディソン)は、いつも通りの黒づくめのクールな殺し屋だが、なぜかジャンゴとサルタナは対決せず(殴り合いするだけ)、共闘して真犯人を追うことになる。

 死んだはずの男の墓を掘り返したり、口をきけないメキシコ人の男がいつも一緒にいたり、銀行頭取の姪がムチで打たれそうになったり、なかなかどうして本家ジャンゴ、セルジオ・コルブッチ好みの展開が用意されているのは、ジャンゴ・ファンにはうれしいポイント。特にクライマックスで、“悪人のひとり”が馬の群れに踏みつぶされる描写は、それほどリアルではないにせよ『続・荒野の用心棒』を彷彿とさせる。そして最後に、サルタナが札束を数えながらうそぶく。「銀行の人間は信用できないな

 これこそが、『ジャンゴ対サルタナ』が言いたかったことだ。いまだかつて、そんなテーマを盛り込んだ西部劇があっただろうか。

■国会議員にまでなったマカロニ監督が放ったマカロニ史上最大の対決!

『ジャンゴ対サルタナ』の監督・脚本を担当したパスクァーレ・スクイティエリの経歴を知ると、謎は解ける。ナポリ生まれのスクイティエリは、新聞社やナポリ銀行に勤めた後、ウエスタン・ブームに乗ってウィリアム・レッドフォード名義で『ジャンゴ対サルタナ』に続いて『ガンマン無頼/地獄人別帖』[1971]を監督したのち、ナポリの犯罪集団カモッラを描いた『殺しのギャンブル』[1973]、シチリア・マフィアをテーマにした『鉄人長官』[1977]、『白熱マフィア戦争/皆殺しの抗争』[1978]などを発表し、社会派監督として認識されている。私生活では、1970年代にイタリアの大女優クラウディア・カルディナーレとパートナー関係を築き、1990年代には右派政党からイタリア上院(元老院)議員に選出された。どうやら、スクイティエリはナポリ銀行勤務時に、横領事件に関連していたようで、退職後に有罪を宣告されている。おそらく、『ジャンゴ対サルタナ』でスクイティエリが描いたのは、実生活で体験した銀行の不条理・犯罪性の告発だったのかもしれない。現代でも時に社会問題となる悪徳銀行の腐敗と戦うには、ジャンゴとサルタナが争っている場合ではなく、共闘し力を合わせなければならない。そんな後の国会議員監督パスクァーレ・スクイティエリのメッセージが伝わって来るではないか。

 ちなみに、彼のウエスタン第2作『ガンマン無頼/地獄人別帖』も、インディアンに罪を着せる白人やフェイクニュースを流すマスコミを描いた問題作で、マニアの間で人気の高い隠れ傑作。新聞記者はクラウス・キンスキー、『待つなジャンゴ引き金を引け』のショーン・トッドも出演しています。[終]
Profile : セルジオ石熊
小学生のときに『荒野の1ドル銀貨』『唇からナイフ』の2本立を映画館で見て以来の映画ファンにしてマカロニ・ウエスタン研究家。DVD-BOXシリーズ「マカロニ・ウエスタン・バイブル」(IMAGICA)でマカロニ関係者インタビュー取材を担当。共著・編書に「エンニオ・モリコーネ映画大全」「百発百中! ウェスタン映画入門! 」「クリント・イーストウッド ポスター大全」「三船敏郎映画大全」「アメリカン・ニューシネマの世界 特集バニシング・ポイント」など。

放送で観るなら

『ジャンゴ ザ・シリーズ』放送記念 特集:ジャンゴたち!PART2
BS10「スターチャンネル」にて8/18(金)ほか放送予定
詳しい放送情報は>>

ドラマ『ジャンゴ ザ・シリーズ』
詳細、放送はこちら>>

配信で観るなら

Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX」にて順次配信中

『続・荒野の用心棒』を観る
『ジャンゴ 繋がれざる者』を観る
『復讐のジャンゴ・岩山の決闘』を観る
『情無用のジャンゴ』(8月10日配信)
『待つなジャンゴ引き金を引け』(8月10日配信)
『ジャンゴ対サルタナ』をお届け(8月10日配信)
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