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歴史や文化がヒットの鍵『屍憶 -SHIOKU-』解説(文/江口祥子)

解説記事

2023.07.21

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スターチャンネルではいまにわかに盛り上がりを見せている台湾産のホラー映画を特集配信・放送。これにあわせ、台湾映画コーディネーターであり、アジアンパラダイス主催の江口洋子さんに解説していただきました。本記事では特集作品から『屍憶 -SHIOKU-』の魅力を紐解きます。

目次

『屍憶 -SHIOKU-』作品情報

<ストーリー>
TVプロデューサーのハウは仕事も順調で、美しい恋人イーハンとの結婚も控えていた。 彼は視聴者の関心を引く番組を試み、“冥婚”といわれる死者との婚儀の風習を取材していた。そんなある日、ハウは公園をジョギング中に奇妙な赤い封筒を拾う…。 その後、夜中に悪夢にうなされるようになり、番組で知りあった霊媒師に相談する。彼はハウが何者かに憑りつかれていると感じ、前世を追跡する事を薦める…。

<作品情報>
監督:リンゴ・シエ/出演:クリス・ウー、ニッキー・シエ、田中千絵、ヴェラ・イェン、池端レイナ/製作:2015年/本編:91分/PG12相当/(c)2015 GOOD FILMS CHINA / GOOD FILMS WORKSHOP ALLRIGHTS RESERVED.

『紅い服の少女 第一章』と同年に公開された大ヒット作

台湾でホラー映画というジャンルを認識したのは、2005年の『宅變』だったと思う。レスト・チェン(陳正道)監督が、青春映画の名作として今も語り継がれる『花蓮の夏(原題:盛夏光年)』の前に撮った作品だ。幽霊が出てくるという意味では、2006年の『シルク(原題:詭絲)』もあるが、こちらはサイエンス・スリラーにカテゴライズされると思う。
本格的なホラーブームのきっかけとなったのは2015年の『紅い服の少女 第一章(原題:紅衣小女孩)』で、この年に同じく話題を集めたのが『屍憶 -SHIOKU-(原題:屍憶 The Bride)』だ。この映画は、『リング』、『呪怨』でお馴染みのプロデューサー一瀬隆重が、台湾との合作で“冥婚”という台湾の伝承文化をモチーフに製作した。台湾では『紅い服の少女』よりも3ヶ月早く夏休み映画として公開され、スマッシュヒットを放った。
本作のもとになったのは、日本の映画会社Pyxisと台湾芸術大学がコラボして新しい才能を発掘するプロジェクトで、リンゴ・シエ(謝庭菡)が卒業制作として作った22分の短編『屍憶 The Bride』だ。2014年の金馬映画祭で上映され高評価を得、日台合作プロジェクトの長編映画として製作がスタートした。長編の日本側の会社は、Pyxisから系列会社のメリーサン グローバル エンターテインメントに引き継がれた。一瀬隆重プロデューサーは最初から関わっており、脚本もリンゴ・シエ、ツァイ・シュンビン(蔡俊彬)と名を連ねている。撮影は全て台湾で行われ、現場も全て台湾スタッフだ。

歴史や文化を取り入れる台湾ホラー

この映画のモチーフになっている“冥婚”とは、現世に未練のある、若くして亡くなった者への弔い、慰めの儀式で、台湾や東アジアの一部で残る風習だ。女性が未婚のまま亡くなると道端に遺族が「紅包」という赤い封筒を置き、誰かがそれを拾うと監視していた遺族が出てきて、死者との結婚を強要されるというもの。そのため、安易に赤い封筒を拾うことはたいへん危険であると言われている。本来紅包は現地でご祝儀のやり取りや餞別を入れて感謝を伝える用途で使われるものだが、“冥婚”の場合は封筒に現金や遺髪、死者の生前の写真などが入っている。『紅い服の少女』シリーズでは台湾の都市伝説や守護神、本作では伝承文化、というように、台湾ホラーには歴史や文化を取り入れることがヒットへの重要なポイントと言える。
監督のリンゴ・シエは、1985年生まれ。2012年に大学在学中に撮った短編『殮財』に続き、卒業制作として作った短編が本作のもとになったことは前述のとおり。この後も人気アーチストのシャオ・ジンタン(蕭敬騰)を主役にしたテレビドラマ『グリーン・ドア-傷ついた魂の集う場所-(原題:魂囚西門)』を手がけ、日本でも配信している。最新作『The Shadows』は、プチョン国際ファンタスティック映画祭で上映され、一貫してホラーを撮り続けている。

要注目の豪華キャスティング

この映画のキャスティングは、豪華だ。TVプロデューサー役を演じたウー・カンレン(吳慷仁)は、今の台湾映画界を担う俳優の一人で、映画にドラマに大活躍。とことん追求する役への掘り下げで、ドラマアワード金鐘奨では、2015年『麻醉風暴』により助演男優賞、2016年に『一把青』で主演男優賞を受賞。映画では2017年の『白蟻-慾望謎網』で台北電影奨の主演男優賞を獲得した。いま日本で見られる作品は、映画『つかみ損ねた恋に(原題:我沒有談的那場戀愛)』、ドラマは『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』、『華燈初上 -夜を生きる女たち-(原題:華燈初上)』、『模仿犯』と、どれも配信になるが、ぜひ様々な役どころを見ていただきたい。
イーハンを演じているシエ・シンイン(謝欣穎)は、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督に見出され、2006年の『アリスの鏡(原題:愛麗絲的鏡子)』で映画アワード金馬奨の助演女優賞を獲得し、ホウ監督の『黒衣の刺客(原題:刺客聶隱娘)』や日台合作の『パラダイスネクスト(原題:亡命之途)』ほかで活躍中の女優だ。見た目はクール・ビューティだが、インタビューの後にあちらから寄ってきて話しかけられたことがあり、とても気さくな人柄で驚いた。2021年に日本でも公開された映画『恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜(原題:怪胎)』、昨年の旧正月に台湾で大ヒットした『角頭 - 彷徨人(原題:角頭-浪流連)』が日本でも配信中。
台湾で最も成功した日本人俳優の田中千絵が、本作ではとてもせつない役を好演している。台湾映画の歴史を変え、今なお歴代興行成績ナンバーワンの座を守り続けるウェイ・ダーシェン(魏徳聖)監督による2008年の『海角七号 君想う、国境の南(原題:海角七號)』でいきなりヒロインに抜擢され、大ブレイクした。その後もウェイ監督作品に出演を続け、中国に進出した時期もある。新作ドラマ『商魂』では、台湾の人気スターに加えて、日本の市原隼人と共演している。
本作が台湾で公開された時に、田中千絵に現地でインタビューしたことがある。その一部を、特別にここで公開しよう。
ーーこの映画に出演することにしたのは?
「女性監督と聞いてとても興味があったことと、どんでん返しで、もう一回読みたくなる脚本でした。ホラーは苦手だけど演じるのは大好きなので、台湾の観客を驚かせたかったから」

ーー苦労した点は?
「幽霊の役なので、吹き替えなしで特殊メイクをしました。それで激しい動きをするので、翌日筋肉痛が凄かった(笑)」

ーー役作りでこだわったところは?
「せつなさを出すために、このふたりはどうやって知り合い、どういう愛の日々を過ごしてきたのか、撮影前に監督とウー・カンレンとディスカッションしました。最後のシーンでは気持ちが入りすぎて大泣きしてしまい、撮影が止まったことがあります」

ーーホラー映画を撮影するときに、何か特別なセレモニーーは?
「クランクインの時に、みんなでお祓いをしました。そして幽霊を演じるので、紅包を身につけるのが台湾での習わしです。中身は50元で、演じ終わったらすぐに使わなくてはいけないそうです。でもとても疲れていたので、うっかり家に持って帰ってしまいました。でも翌日すぐにその50元を使ったので、何事もありませんでした」

ーー撮影中に起きた不思議なことは?
「監督の前を白い服を着た男が走って行ったそうで、白い服のスタッフはいないのでおかしいなと思い、ちょうどその方向から来たスタッフに聞くと、そんな男は見ていないということでした」

ーー『屍憶 -SHIOKU-』を見る方に向けてひと言
「台湾のホラー映画の進化を見て欲しいです。恐いもの好きな方はぜひ!」
via (2016年、台北にて)

視聴方法

配信で観るなら

放送で観るなら

BS10「スターチャンネル」にて8/12(土)・8/13(日)ほか放送予定
詳しい放送情報は>>

オカルトエンタメ大学 コラボ番組

チャンネル登録者数16万人のYouTubeチャンネル「オカルトエンタメ大学」とコラボ決定!怪談研究家・吉田悠軌らによる「特集:台湾ホラー最前線!」作品についての解説動画も配信中。

【怪談】今でも残る風習・信仰が続々登場!台湾最恐の実話怪談会を開催(吉田悠軌×クダマツヒロシ×チビル松村×宮代あきら)

via YouTube
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