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台湾ホラー映画ブームの火付け役『紅い服の少女』シリーズ解説(文/江口祥子)

解説記事

2023.07.21

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スターチャンネルではいまにわかに盛り上がりを見せている台湾産のホラー映画を特集配信・放送。これにあわせ、台湾映画コーディネーターであり、アジアンパラダイス主催の江口洋子さんに解説していただきました。本記事では特集作品から『紅い服の少女』シリーズの魅力を紐解きます。

目次

作品情報

紅い服の少女 第一章 神隠し

<ストーリー>
不動産屋で働くジーウェイは祖母と 2 人暮らしで、ラジオ DJ の恋人イージュンとの仲も順調だった。ある日、祖母の友人が山でハイキング中に行方不明になり、続いて祖母も失踪してしまう。ジーウェイは、突然送られてきたカメラの映像に驚く。それは、ハイキングを楽しむ老人達のあとに紅い服の少女がついて行くものだっだ。そしてついにはそのジーウェイも行方がわからなくなり、イージュンは人を惑わす魔物=魔神仔(モーシンナア)の仕業ではないかと疑い始める…。

※魔神仔(モーシンナア)とは
台湾で古くから伝わる山の精怪。見た目は赤いサルのような姿をしており、台湾の先住民も目撃していたとされている。赤い服を着た子供にも見え、人をもてあそび、山や森で道を迷わせて帰れなくすると言い伝えられている。


<作品情報>
監督:チェン・ウェイハオ/出演:アン・シュー、ホアン・ハー、リウ・インシャン、チェン・ボーチュウ、リン・イーチェン/製作:2015年/本編:95分/(c)2015 The Tag-Along Co., Ltd

紅い服の少女 第二章 真実

<ストーリー>
社会局家庭内暴力センターで働くリーは、シングルマザー。一人娘の妊娠が発覚し中絶を強いるが、娘のヤーティンは反発し姿を消す。学校の監視カメラの映像に、紅い服の少女に連れ去られるヤーティンの姿が映っており、リーが相談を受けていた女性から驚愕の事実を聞く…。前作第一章のヒットを受けて創られた第二章では、邦題で「真実」とサブタイトルが付けられているように、第一章で人を連れ去る“紅い服の少女”の正体が明かされる。第一章のイージュンも登場し、二作に繋がる“母親”、“家族”というテーマが浮かび上がり、単に恐いだけのホラー映画ではないことが明確になる。

※本作に登場する虎爺(フーイエ)とは
台湾では山神の使いと伝承され、村の魔除けとして各地に祀られている。


<作品情報>
監督:チェン・ウェイハオ/出演:レイニー・ヤン、アン・シュー、フランチェスカ・カオ、ホアン・ハー、ルビー・チャン/製作:2017年/本編:110分/(c)2017 The Tag-Along Co., Ltd

人面魚 THE DEVIL FISH

<ストーリー>
ある裕福な邸宅で、何かに取り憑かれた父親によって一家が惨殺された。警察から犯人の霊払いの依頼を受けた霊媒師のリンは、その邪悪な霊を魚の体内に閉じ込めた。ところが、ひとりの少年がこの魚の死体から稚魚が出現しているのを見つけ、家に持ち帰ってしまう…。

<作品情報>
監督:デビッド・ジュアン/出演:チェン・レンシュオ、ビビアン・スー、チャン・シューウェイ、ロン・シャオホア、フランチェスカ・カオ/製作年:2018年/本編:116分/(c) 2018 Entertaining Power Co. Ltd.  All Rights Reserved.

台湾ホラー映画ブームの火付け役となった第一章・第二章

数年前から台湾映画はホラー映画ブームだ。それまでにも日本のホラーに影響を受け、台湾の監督達が創作意欲をそそられるホラーは何作か創られていた。種火のようなふつふつとした状況から大きな炎ととなったのが、2015年に公開されこの年の興行収入5位という成績を収めた『紅い服の少女 第一章 神隠し』。このヒットを受けて2017年に創られた『紅い服の少女 第二章 真実』は年度トップヒット、2018年のスピン・オフ『人面魚 THE DEVIL FISH』もこの年第4位という好成績だった。この三作は、20年ほど前からの都市伝説“赤い服を着た少女が誰かを連れ去る”という怖い話をモチーフにしたものだ。
第一作ではヒロインの恋人の祖母の失踪に続いて恋人も行方不明となり、魔物が住むという森へ探しに行くというストーリー。第二作はシングルマザーが姿を消した娘を探す物語で、『人面魚 THE DEVIL FISH』はパート2で登場する「虎爺」という守り神をフィーチャーし、別の監督で撮られたスピン・オフだ。登場人物やそれを演じるメインキャストは違うものの、愛する人を取り返したり、娘や母親を救うという家族を描いた作品で、台湾の伝統や文化を背景に、主人公が対峙する魔物の中に自らが封印していた後悔や後ろめたさが見え隠れするのもこのシリーズの特徴になっている。
一・二作を撮ったのは、当時期待の新鋭だったチェン・ウェイハオ(程偉豪)監督。この若き才能に着目したプロデューサーが監督に起用し、チェン・ウェイハオは見事に期待に応え才能を開花させた。台湾では監督が自分の撮りたいテーマを制作することがほとんどだが、チェン・ウェイハオ監督は、それに加えて『紅い服の少女』のようなプロジェクト・システムで依頼された案件を同時期に成功させた、モンスター級監督と言えよう。今や台湾映画界の中核となって、活躍している。日本では、『The Soul: 繋がれる魂(原題:缉魂)』が配信中。今年の2月に台湾で公開された『關於我和鬼變成家人的那件事』は、歴代興行成績ベスト10に入るメガヒットを放った。

台湾映画界を代表する俳優陣

第一章のジーウェイを演じたのは、ホアン・ハー(黄河)。ドラマ『危險心靈』で主演デビュー、いきなりドラマアワード金鐘奨の主演男優賞を受賞するという快挙だった。数々の映画やドラマで活躍し、本作で映画アワード台北電影奨の主演男優賞を獲得した。その後も幅広い役柄へのチャレンジと研鑽でキャリアを積み上げ脚本家としても活動、クリエイターとしての将来も期待される。
イージュン役のアン・シュー(許瑋甯)はアイドルドラマからキャリアをスタートさせ、軸足を映画に移してから急成長を遂げた。本作でホアン・ハーと並んで台北電影奨の主演女優賞に輝いたのだが、他の二作とあわせ三作が対象となったのは台湾でも珍しい。その後も第一線で活躍を続け、台湾映画界を代表する女優の一人となった。
第二章で主役を演じたレイニー・ヤン(楊丞琳)は、アイドルグループのメンバーでデビューした、台湾アイドルドラマの代表的女優。ソロ歌手としても絶大な人気を誇る中、映画ではアートからエンタメまで幅広い役を演じ、本作で初の母親役にトライした。日本語が流ちょうということでも知られるが、語学学校にも行かず全て日本のドラマを見て習得したという驚きの根性の持ち主でもある。
紅い服の少女の真実について語るリン役のフランチェスカ・カオ(高慧君)は、台湾先住民歌手であり女優。多くの文芸ドラマに出演し、映画でも味わい深い演技を見せている。最近では、『ゾンビ・プレジデント(原題:逃出立法院)』でゾンビと戦う男前な役が話題になった。

ビビアン・スー主演で作られたスピン・オフ

『紅い服の少女』シリーズのスピン・オフとして創られた『人面魚 THE DEVIL FISH』は、監督はチェン・ウェイハオからデビッド・ジュアン(莊絢維)にバトンタッチした。パート2からさらに時間を遡り虎爺(フーイエ)という山神の使いをフィーチャーして、魚の悪霊に取り憑かれた主人公を救うという話になっている。もちろん独立した作品として成立しているが、前2作を見ていると更に楽しめる内容だ。三代にわたる虎爺の家系や、責務を担う男達の葛藤も見どころと言えよう。
主演は、日本でも活躍していたビビアン・スー(徐若瑄)。日本でのアイドル時代とはうって変わった母親像を力演し、最近では自らのプロデュース作品に出演することが多い。中でも、2020年の東京国際映画祭で上映された『弱くて強い女たち(原題:孤味)』が大ヒットし、台湾の映画賞も総ナメにした。7月より日本でも公開されている『ママボーイ(原題:初戀慢半拍)』で、息子のような青年と年の差ラブ・ストーリーを展開し、話題になっている。
虎爺役のチェン・レンシュオ(鄭人碩)は、ウー・カンレン(吳慷仁)、カイザー・ジュアン(莊凱勛)と並ぶ台湾の売れっ子俳優。アート映画からヤクザ映画まで、幅広い演技で数々の映画賞受賞歴を持つ。残念なのは、チェン・レンシュオの出演作が日本では映画祭での上映や配信のみで、劇場で一般公開されたのは『人面魚 THE DEVIL FISH』だけということ。もっと日本でも注目されることを願う。

特集:台湾ホラー最前線!|視聴方法

配信で観るなら

放送で観るなら

BS10「スターチャンネル」にて8/12(土)・8/13(日)ほか放送予定
詳しい放送情報は>>

オカルトエンタメ大学 コラボ番組

チャンネル登録者数16万人のYouTubeチャンネル「オカルトエンタメ大学」とコラボ決定!怪談研究家・吉田悠軌らによる「特集:台湾ホラー最前線!」作品についての解説動画も配信中。

【怪談】今でも残る風習・信仰が続々登場!台湾最恐の実話怪談会を開催(吉田悠軌×クダマツヒロシ×チビル松村×宮代あきら)

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