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【連載】#4『ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋』| 坂本安美 Gaumont特集 解説コラム  original image 16x9

【連載】#4『ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋』| 坂本安美 Gaumont特集 解説コラム

解説記事

2023.12.22

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世界で最も古い映画会社のひとつ、フランスの「Gaumont(ゴーモン)」の作品群の中から、「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」誌元編集委員で、 アンスティチュ・フランセ(主に東京日仏学院)にて映画プログラム主任としてご活躍されている、坂本安美さんがセレクトした10本を放送・配信する特集「Gaumont セレクション」。本連載では、坂本さんご自身に、各作品のみどころを解説していただきます。本編とあわせ、ぜひお楽しみください。

 「ベルナデットはまるで人生がそこにかかっているかのように演じる」、そう述べたのはフランソワ・トリュフォーだった。トリュフォーは、当時18歳のベルナデット・ラフォンと出会い、たちまち彼女の魅力にとらわれ、実質的な監督デビュー作となる短編『あこがれ』(1957年)に女優として迎えることになる。撮影場所も彼女の生まれ故郷ニームへと変更され、南仏の光を浴び、裸足で駆け回り、自転車を漕ぎながらスカートを風に翻すベルナデットを映画が発見し、そして彼女の瑞々しい美しさをスクリーンの中で発見した観客たちは、そこに新たな風(ヌーヴェル・ヴァーグ)の到来を予感する。
 こうして映画に発見されたベルナデットは、クロード・シャブロル、ジャック・リヴェット、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズの作品に次々と出演していく。彼らは、トリュフォーとともに映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』に集まり、映画の現代性について論じ、映画を撮ることでそれを実践していった人々であり、彼らのそうした運動は「ヌーヴェル・ヴァーグ」とよばれ、映画史を大きく変革していく。それまでのフランス映画がスタジオの中にパリの街を再現し、文学的な台詞をもとにした脚本で映画が撮られていたのに対して、彼らは、自分たちが生活しているその場所、その空気感の中で、同時代の若者たちを記録していくことの大切さを感じていた。まるでニームの大地からそのまま生まれ出たかのような野生美を湛え、豊かな身体で横柄なまでに堂々と歩き、ときに挑発的と思われるほど官能的なベルナデットは、彼らにとって、現代性を体現する存在そのものだったのだ。
 56年に及ぶ映画人生でベルナデット・ラフォンは、前衛的作品に果敢に挑戦すると同時に、大衆的な作品にも積極的に出演していった。惜しくも74歳でその生涯を閉じることになるが、そのフィルモグラフィーには驚くほど多様な作品が並んでいる。そのベルナデットのほぼ最後の主演作となったのが『ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋』である。
 遊び心あふれる邦題がつけられた本作、原題はシンプルに『ポーレット』であり、そのポーレット役を演じるのが我らのベルナデット・ラフォンであるのだが、冒頭の登場シーンから、いったい誰にこの役を演じることができるだろうかと呟いてしまうほど、ポーレットとベルナデットが一体化して見えてくる。たとえばクロード・シャブロルの『美しきセルジュ』(1958)、ネリー・カプランの『海賊のフィアンセ』(1969)、あるいはトリュフォーとタッグを組んだ二作目『私のように美しい女』(1972)などの作品でベルナデットが演じてきた女性たちのように、ポーレットは、社会にたやすく適合することなく、アナーキーで、破壊的なまでに自由でありながら、いつの間にか周囲を魅了してしまう。ベルナデット・ラフォンに贈られたかのようなこのポーレットの役を、彼女はなんとも生き生きと楽しそうに演じている。まずはどこまでも過激で、快活で、創意に溢れ、そしてチャーミングなベルナデットの活躍に、お菓子を片手にぜひ酔いしれてほしい。
『ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋』|PAULETTE
監督:ジェローム・エンリコ/出演:ベルナデット・ラフォン、カルメン・マウラ、ドミニク・ラヴァナンほか

<作品概要>
フランスの重鎮、ベルナデット・ラフォンが、大麻入りのお菓子を売るおばあちゃん、という型破りな主人公をコミカルかつチャーミングに演じる。そんな主人公の大麻密売に巻き込まれる友人役には、数々のペドロ・アルモドバル作品で強い印象を残してきたカルメン・マウラが登場。名女優たちが繰り広げるドタバタ劇は笑いあり、涙ありの心あたたまるフレンチ・コメディとなっている。

<あらすじ>
パリ郊外の団地に暮らすポーレットは夫にも先立たれ、わずかな年金で苦しい生活を送っている。ある夜、団地の外で麻薬の密売が行われおり、彼らの稼ぎがいいことを知ったポーレットは、かつてケーキ屋さんを営んでいた頃の腕を活かし大麻入りのクッキーやケーキを販売することに。お菓子はたちまち大人気となり、友人らも巻き込んでポーレットの秘密のケーキ屋さんは大繁盛。しかしついに孫を危険に巻き込む事態に発展し…。

(c) 2013 Gaumont / France 2 Cinema
特集配信:フランスの老舗映画会社「Gaumont」セレクション
世界で最も古い映画会社のひとつ、フランスの「Gaumont(ゴーモン)」の作品群の中から、アンスティチュ・フランセ(主に東京日仏学院)にて映画プログラム主任としてご活躍されている、坂本安美さんに全10本をセレクトしていただきました。惜しくも日本ではなかなか見られないレア作品を中心に、12月と1月の2カ月連続でお届けします。各作品は以下よりお楽しみください!

・呼吸ー友情と破壊 視聴はこちら>>
・ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋 視聴はこちら>>
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