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ゼロテスター[HDリマスター版]

イントロダクション

ヒーローでもロボットでもない画期的なSFアニメ『ゼロテスター』が本邦アニメ史に与えた偉大なる功績とは

『ゼロテスター』登場前のTVアニメは、『鉄腕アトム』(’63年)や『鉄人28号』(’63年)、『エイトマン』(’63年)、『サイボーグ009』(’68年)等、人気漫画をアニメ化した、SFよりヒーロー・キャラクター色の強い作品が多かった。『エイトマン』はSF作家の平井和正が原作。タツノコプロの初制作テレビアニメ『宇宙エース』(’65年)では宇宙塵同人がSF考証を手がけ、SF性が強調された。以降も『海のトリトン』(’72年)等SF系アニメは放送されたが、まだキャラクター性やファンタジー性の方が強かった。その流れを変えたのが『科学忍者隊ガッチャマン』(’72年)と『マジンガーZ』(’72年)だ。ほぼ時を同じくして登場したこの2作は、より上の年齢層を狙った作品。それ以前の作品とは比べものにならぬほどSF性もビジュアルもクオリティアップされた。じつに『ゼロテスター』の放送の約1年前、’72年のこと。『ゼロテスター』はヒーローでもロボットでもない当時“第三のSFアニメ”として登場。その『ゼロテスター』のSF及びビジュアル面を創造したのが、当時新進気鋭のSF作家・高千穂遙率いるクリスタルアートスタジオ = スタジオぬえだった。つまり後の『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』に繋がる、’70年代から’80年代のSFアニメの“架け橋”こそが『ゼロテスター』である。

後のサンライズ作品群のみならず、’80~’90年代を代表するSF・ロボットアニメのクリエイターたちの出発点

監督は『太陽の牙ダグラム』(’81年)、『装甲騎兵ボトムズ』(’83年)で高い評価を得た高橋良輔。高橋は一時期、アニメ業界から距離を置いており、本作が現場復帰作にして初監督作品となった。各話絵コンテ及び演出には『機動戦士ガンダム』(’79年)や『伝説巨神イデオン』(’80年)の富野由悠季(当時は富野喜幸)、『宇宙戦艦ヤマト2』(’78年)や映画『海のトリトン』(’79年)の棚橋一徳らが担当。各話作画監督には『マジンガーZ』(’72年)や『百獣王ゴライオン』(’81年)の中村一夫、『機動戦士ガンダム』や映画『クラッシャージョウ』(’83年)の安彦良和(絵コンテや演出も兼任)らがあたった。原作を『勇者ライディーン』(’75年)や『戦闘メカ ザブングル』(’82年)の鈴木良武(五武冬史名義で脚本も執筆)が担当。各話脚本を『太陽の牙ダグラム』や『戦闘メカ ザブングル』の吉川惣司、『サイボーグ009』(’79年)や『スペースコブラ』(’82年)の山崎晴哉、『機動戦士ガンダム』や『銀河旋風ブライガー』(’81年)の山本優、後に『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』等を執筆する、当時クリスタルアートスタジオ所属の新人だった松崎健一らが手がけた。今これだけの豪華な顔ぶれを揃えるのはほぼ不可能だ。

現在なお、高い評価を得ているSF・メカアニメの原点にして、傑作、名作エピソードが目白押し

SFアニメはもちろんのこと、ロボットアニメというジャンルもまだ確立していなかった当時、本格SFアニメを目指した本作は、50年を経た今日の視点で観ても決してその内容に劣化は感じず、むしろ黎明期ゆえの傑作、名作エピソードを多数創出していた事実を再確認できる。何よりSF・ロボットアニメの“パターン”が確立されていなかったため、各話毎のSF設定やキャラクター、エピソードの持つ自由度は今と比較にならず、“パターン破り”ともいうべきエピソードの数々に初見の方は衝撃を覚えることだろう。 第9話ではアーマノイドに捕らえられた吹雪シンが、彼らが開発していた(エジプト王家の)王様(ファラオ)型巨大ロボットを奪ってアーマノイド基地をせん滅するという異例な展開に度肝を抜かれる。また、第56話ではかつてゼロテスター隊員として開発された3体のアンドロイドがアーマノイドの手で蘇り、テスター隊に挑戦。“心を持たない”という理由から彼らが封印された事実が語られ、まるで現在のAI技術を見越していたかのようなSF・風刺性の高い内容に驚かされる。今こそ“高度のSF作品”として本作をご鑑賞いただきたい。

『シティーハンター』の冴羽獠役・神谷明や『ドラゴンボールZ』のフリーザ役・中尾隆聖ら現在の大御所が新人として出演!

本作の主人公のひとり・吹雪シンの声は『シティーハンター』(’87年)の主人公・冴羽獠役の神谷が演じている。神谷は翌’74年4月スタートの元祖合体ロボットアニメ『ゲッターロボ』の主人公・流竜馬(リョウ)役と並行して本作に出演。本作における「0(ゼロ)チャージ!」等のシャウトは、『ゲッターロボ』の「ゲッター、ビームッ!」や「ゲッタートゥマホォウクッ!」等に進化。本作に続いて東北新社・創映社タッグで制作した『勇者ライディーン』(’75年)の主人公・ひびき洸の「フェードッ、インッッ!」、「ゴォオッド、ゴォオガンッ!」等で“武器・必殺技シャウト”を完成。“神谷節”で後のロボットアニメ界を牽引していった。荒石ゴー役の竹尾智晴とは『ドラゴンボールZ』(’89年)のフリーザや『それゆけ! アンパンマン』(’88年)のばいきんまんの声で知られる中尾隆聖のこと。『宇宙戦艦ヤマト』(’74年)の森雪役で知られるリサ役の麻上洋子も現在は声優と並行して人気講談師・一龍斎春水として活躍中。反対に敵・アーマノイドは当時のベテラン声優陣が担当。初代司令官のメビウスの声を『名探偵コナン』(’01年)のジェイムズ・ブラックや『ONE PIECE』(’01年)のネフェルタリ・コブラ役を演じた家弓家正、二代目司令官のバルギスを『スカイキッド ブラック魔王』(’70年)のブラック魔王や『バビル2世』(’73年)のヨミ役などで有名な大塚周夫が。そしてアーマノイド・ボスを『天才バカボン』(’71年)のバカボンパパや『ど根性ガエル』(’72年)の宝寿司のだんな役等で有名な雨森雅司が演じ、画面を引き締めた。広川太一郎や川久保潔、八代駿ら鬼籍に入られた方も少なくないが、当時新人だった神谷、中尾、麻上は半世紀を経た2023年現在、声優界のレジェンドとして今なお新しいファンを生み、魅了し続けている。そんな彼、彼女らの偉大なる“原点”こそが本作なのだ。

ガンダム、マクロスを生んだスタジオぬえが創造した新しい主人公像とメカニックデザインが、次世代SFアニメの礎(いしずえ)に

『クラッシャージョウ』(’77年)や『ダーティペア』(’80年)やなどの人気SF小説シリーズで知られる作家の高千穂遙は当時クリスタルアートスタジオの代表を務め、創映社の担当からの依頼で本作の企画及びデザイン制作にあたった。そして、放送延長か終了しての別新作かの決断を迫られた高千穂は漫画の神様・手塚治虫に新作のアドバイスを仰いだが、延長に決まったため、新作に関する手塚のアイディアが使われることはなかったとつい最近、SNS上で述懐している。『サンダーバード』と異なり外宇宙からの未知の機械化人類を敵に設定したことで、『サンダーバード』以上に“宇宙”がクローズアップ。結果、本作独自の世界観が生まれ、本家との差別化を図ることに成功した。また、二枚目半のイケメン・吹雪シン、直情径行ながらお人好しの荒石ゴー、一見クールながら心優しい美少女・リサ、テスター隊3人のキャラクターも当時の“等身大の若者像”を象徴したものとなっており、同時期の『マジンガーZ』(’72年)と並んで視聴者に“新しい主人公像”を提示した。救助だけでなく戦闘にも長けた高性能メカであるテスター1~4号機や人工島指令基地等は、クリスタルアートスタジオによるデザインのかっこよさも相まって児童間で人気を博した。玩具類の売り上げも好調で、結果1年と約3か月というやはり当時としては異例のロングランに導いた。
(文・岩佐陽一)

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