スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が、これまでも自作にインスピレーションを与えてきたフランスの芸術家ジャン・コクトーの戯曲「人間の声」を原作に、自身初の英語作品として作り上げた30分の短編。原作を自らの作風に合わせて翻案し、おなじみの赤を主体にした色彩美で、アルモドバルらしい作品に仕上がっている。恋人に別れを告げられた直後の主人公を、一人芝居で熱演するティルダ・スウィントンの存在感は圧倒的。

1人の女が、ただ時が過ぎるのを待っている。傍らにあるスーツケースを、持ち主の元恋人が取りに来るはずなのだ。ところが元恋人は結局、姿を現さない。傍らには、主人に捨てられたことを理解していない犬が、落ち着きなく佇んでいる。待ち続けた3日間のうち、女は1度だけ外出し、斧と缶入りガソリンを買ってきた。無力感に苛まれた彼女は、絶望を味わい、理性を失う。そして、ようやく元恋人から電話がかかってくるのだが…。

• PEDRO ALMODOVARペドロ・アルモドバル

• TILDA SWINTON ティルダ・スウィントン
• AGUSTIN ALMODOVAR アグスティン・アルモドバル