製作総指揮&主演ベネディクト・カンバーバッチ パトリック・メルローズ 12月 BS10 スターチャンネル独占日本初放送!

12/23(祝・日)よる11:00
第1話先行無料放送!

【STAR2 字幕版】 1/7(月)より毎週月曜よる11:00 ほか
【STAR3 二ヵ国語版】 1/10(木)より毎週木曜よる10:00 ほか ※1/10(木)は第1話無料放送

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Interview

「僕には一生のうちに演じたい役が2つあって、これはそのうちの一つなんだ」

01/本シリーズに出演したきっかけは?

原作となったエドワード・セント・オービンの「パトリック・メルローズ」シリーズの権利を持っているマイケル・ジャクソンとレイチェル・ホロヴィッツが、僕のところにきたんだ。原作を読んだことのある役者はごまんといることはわかっていたし、きっとみんな「なかなか面白そうな役じゃないか。やってみたいな」と思ったと思うんだ。だから僕は、極めてラッキーだったと言えるよね。ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい場所にいたのだと。Reddit〔アメリカ最大級のオンライン掲示板〕にこの役をやりたいと書き込んだら、電話がきたんだよ!当時NYにいた僕に、会いたいと言ってくれたんだけど、約束した朝食に僕は少し遅刻してしまったんだ。ドキドキしたよ。だって会う前日の夜そして当日の朝だというのに、まだ最後の2エピソードを大急ぎで読みなおしている途中だったのだから!その時はまだ、彼らが既に僕に決めていたことを知らなかったから、この傑作をTVドラマ化するんだという明確な構想を話してくれた時も緊張したままだったよ。

02/パトリック・メルローズとはどんな人物でしょう?

パトリックは、悲惨な子供時代から決別しようと必死にもがいている人物で、そのため、心の居場所も失ってしまった。薬物中毒に陥り、自暴自棄だったが、実に面白く聡明な人物でもあった。この作品のコアなテーマは、僕自身でもなじみのある世界のものだと思っていて、この大きな苦しみを抱えながらも、犠牲者の立場から生還者へと生まれ変わる。そんな、とんでもない旅をしているこの特殊な男の視点を通して、特権階級の世界をひっくり返せるのでは、と思ったんだ。彼は、この状況下である意味、最後まで勝ち抜いたチャンピオンだよね。そして、崩壊しつつある上流社会に鋭く切り込んで、暴き出していく。まるで鋭いメスをもった検視官のようにね。こうした流れがまるで喜劇のように展開し、特権社会特有の権力は、話が進むにつれ失われていくんだ。一人の人間の一生としては、かなり壮大なスケールだよ。無垢な子供時代から、怯えて自暴自棄な20歳の青年を経て、30代では正気を取り戻し、結婚して父親になるー孤児を養子に迎えてねーという人生の変遷。これほど描いてみたくなるキャンバスはないね。

03/役作りのために、薬物中毒の人たちと事前に話をしましたか?

はい。リサーチ会社のシェールとラッセルにお世話になったよ。素敵な夫婦だった。アドバイザー的な立場でこのドラマづくりに関わってくれ、実際に様々な薬物乱用や薬物中毒に苦しむ人の救済団体のアドバイザーを務めているんだ。彼ら自身も薬物中毒に苦しんだ経験があって、そのことを包み隠さず話してくれたことで、リハーサルや撮影現場など全制作プロセスを通してとても励みになったし、サポートしてもらった。もちろん、テディ自身〔原作者エドワード・セント・オービン〕にもね!薬物にまつわるビジネスや器具などは非常に複雑で、それらを理解することは、薬物のからだと心への影響を理解するのと同じくらい重要だった。でも、一番大事なのは、薬物を欲してしまう動機なんだ。このような破壊的な薬物を、どうして心が欲するのか。何に替わるものなのだろうか。僕が話をした人たちは、全員こう言っていたよ。ヘロインは、母親からは決して得られなかった、包まれるような温かさ、だと。自己の存在に苦しむことからの解放。といっても、現実逃避だけではないんだ。特にオピオイド(アヘン)系よりもっとアッパー系の薬物は、中枢神経の緊張と記憶を鈍化させ、自分自身の深い井戸へと突き落とし、そして自分でつくりあげた渦へと落ちていくんだ。コカインなんか、粉末結晶状のジェットエンジンだね。極上のハイになったところで、ヘロインで軟着地する、というところかな。もちろん、テクニカルな部分に忠実でなければならなかった。僕たちがドラマで出会う主人公は、既に大変な金持で、経験豊かなヤク中なんだよ。だから、薬の打ち方から身体や心への影響までを正しく理解することは、極めて重要なことだったんだ。

04/原作者のエドワード・セント・オービンにはお会いしましたか?

はい。社交の場での交流はあったけど、役が決まってからは、急いでテディに会うようなことはしたくなかった。彼やパトリックのことを理解しようと、あまり早くからもがきたくなかったからね。でもある日、パーティーで彼と鉢合わせたんだ。テディは「ドラマ化の話って本当なのかい」と聞いてきて、僕は「もちろんさ」と答えたよ。彼は優しくて、一緒にいて楽しかった。見事なまでに博識で、インテリで、ウィットに富んでいた。それと同時に驚くほど思いやりがあって、上品だった。彼はむしろ自己嫌悪というより堂々とした皮肉屋で、原作とはそこが違った。作中のパトリックは自己嫌悪が強く、それは魅力に欠ける要素だからね。こういう人は、遠くから見ている分には面白いけど、実際に関わりたくはないものだよね。テディはパトリックが自分の分身だということを隠さない。あれほどの悪から、これほどのよいものが生まれるなんて、奇跡だよ。そのことだけでも彼を尊敬する。もちろん、それを文学作品に仕上げたことはもっとすごいけれども。

05/2012年当時、この役をやりたいと仰っていましたが…

オーストラリアでファンの集まりがあった時、そう言ったね。ハムレットもやりたい、とも言ったんだ。この2つが、僕が一生のうちに演じてみたい役だったから。2011年に原作シリーズ最後のエピソードが発表され、それからやっと僕はこのシリーズを読み始めたんだ。ひどいよね。熱烈なファンもいるというのにね。でも僕は、あの世界に少し理解があったから、うまくいくような気がちょっとしていたんだ。きらびやかだけれど冷たい、皮肉の満ちた上流社会を知っていたから。僕の祖母がこう言ったことがある。「なんと退屈なのでしょう。そのお話をするのは、やめてちょうだいな。なんとも退屈ですからね」ってね。「退屈」って…。まるで誰もあらゆる感情や関心を表に出さず、全くの無関心を装うようだよね。すごく小馬鹿にしている感じがするだろう。言っておくけれども、僕の祖母は面倒見がよくて、親しみやすい人だったよ。ただ、社会的圧力のようなものがあって、物事をなんでも軽く受け止め、お酒の席での軽い会話のようにしてしまうんだ。

「この作品は、本当の豊かさというのはいかに愛であるか、という話なんだ」

06/この作品に出てくる薬物の乱用や中毒といった問題は、貴族階級にもおきているのですね?

はい。だから不安としてあったのが、僕たちはこれを上流社会特有の問題として捉えているのか、この作品が誰かを排除や疎外してしまわないか、ということなんだ。薬物中毒に苦しむ人、薬物乱用を経験したことのある人というのは、残念なことに、どの社会的階層にも存在して、だからこのテーマは誰にでも通じるような、普遍性があると思った。古い社会の振る舞いや、上流社会の中でも最悪の人たちの態度など、彼らの断末魔の苦しみをレーザーメスのように鋭く切り込んで暴けると思ったのだ。彼らは、財産や富について知り尽くしているかもしれないが、この作品は、本当の豊かさというのはいかに愛であるか、真実の愛、無垢で純粋な愛というものがいかに最後は勝つものなのか、ということを教えてくれるんだ。といっても、そこに到達するにはとんでもない苦労が伴うけれどね。

07/演じるだけでなく、プロデューサー(製作総指揮)も兼ねていますね…

はい。僕が作品に関わって大分経ってから、制作会社をつくったんだ。これまで沢山の長編素材が送られてくるんだけど、2時間あるいは2時間半という映画の枠に収めきることができないんだよね。だから、自分たちで映画化できそうな原作を探して脚本をつくった方が理に適うということになって。それが僕たちの長所ともいえるのだけれど、僕は自分が開拓した作品を演じることと同じくらい、僕が出演しない作品も開拓したい気持ちがあるんだ。

08/プロデューサーと主演を兼ねることの難しさは?

時に応じて、違う顔を持たなくてはならない。それがややこしく感じる時があったけど、大体は、準備期間や制作前の段階では僕はどちらかというとプロデューサーで、演技の準備中でも時間の許す限り制作チームとキャストの取りまとめをしていたよ。その段階が終わると、みんなに引き継いでもらうわけだ。実際に撮影が始まる頃には、僕がプロデューサーとしてできる仕事はほとんどなくなっている。演技の方で忙しくない時は、プロデューサーやディレクターの仕事の方でできることを探すけれども、5つ全てのエピソードをエドワードが監督しているところを見ていると、今は僕の出番はないね。僕には小さな子供が2人いるし、その世話で手一杯というところかな。

09/「ドイツ1983年」のディレクター、エドワード・ベルガーから脚本のデヴィッド・ニコルズやキャストまで、豪華メンバーの揃ったチームですね。

ええ。多くの優秀な監督が候補に挙がったんだけれど、エドがずっと第一候補だった。彼に実際会った時、エドはこう言ったんだ。「この原作のシリーズは、5つの全く違う作品から構成されていると僕は思っている。カメラワークだけじゃなくて、ストーリー性が非常に大事だよね。」実は僕は、ユーモアと上流社会のことをうまく表現できるか、少し心配していたんだ。この作品の鍵でもあるからね。でもエドはユーモアのセンスに溢れた人だったよ。ドイツ風ユーモアは英国風ユーモアに極めて近いしね。でも彼はスイス系オーストリアだっけ。どちらにしても、彼は素晴らしいユーモアのセンスの持ち主だよ!

10/デヴィッド・ニコルズの起用を決めたのは、あなたですか?

いいや。マイケルとレイチェルが既に彼と話を進めていたんだ。エドはまだ関わっていなくって、撮影監督のジェームズ・フレンドもいなかった。才能あふれるヘアメイクのカレン・ハートリー=トーマスも衣装デザイナーのキース・マッデンもまだだったよ。

11/父親役のヒューゴ・ウィーヴィングとは、あまり一緒に演技をする機会はなかったのですね?

はい、残念ながらね。僕は彼を敬愛している。彼には怖いくらいの才能があるし、この役の彼は並外れていた。カリスマ性があり、すさまじく恐ろくて、自身の魂を痛めつけられたように、息子を痛めつけるという父親…。彼がパトリックにしたことは、相当にひどい。子供のパトリックは破壊されてしまった。ヒューゴはこの役に全力投球で挑戦したよ。でも彼ほど優しくて穏やかで笑わせてくれる人はいないよね。役者の中で、撮影クルーから一番愛されていたのは彼じゃないかな。

12/ジェニファー・ジェイソン・リーについてはどうですか?

彼女とはもう少し長く一緒に撮影できたよ。歳を取ってからのエレノアとしてね。彼女は素晴らしかった。変化していく様子やカメラを前にした演技もすごかった。若い頃のエレノアとは共演する機会があまりなかったけど、編集前の映像は観たよ。僕がアトランタのどこかで、「ドクター・ストレンジ」として「アベンジャーズ」の撮影をしていた時にね。彼女の選択は大胆だし、監督やスタッフとの深い信頼関係があるから、スクリーン上で実に美しく映るよね。演技中の彼女は、本当に素晴らしいよ。ニコラス・プラットを演じたピップ・トレンスも、全編を通じて見事だった。発言は常に機知に富んでいて、社会的に他人を利用することを何とも思わないような、無敵な人物。けどその実、危ういもろさを抱えていて、それが観ている人の心を打ち砕くよね。ホリデー・グレインジャーは、若い頃は権力にあらがう魅力的なヒッピーだったんだけど、それが物質主義になって、体制側の人間になるんだ。彼女からはとても多くを教わったよね。プラサナ・プワナラジャと僕は友人なんだけど、ずいぶん長い間一緒に仕事をしていなかった。彼が演じたのはジョニー。僕の妻役アンナ・マデリーとは、BBC作品の「The Child in Time(原題)」※で一緒だった。だから気心も知れていたし、長い間苦労を共にする妻マリー役として最高だったよ。難しい役どころだったけれど、非常に美しく、力強く感動的に演じてくれたよ。パトリックの長年の友人かつ情事の相手役ジュリアを演じたジェシカ・レインもファンタスティックだった。素晴らしいくらい意地の悪い女性の役でね。皮肉に満ちた無関心から深い絶望への旅を見事に演じ切ってくれた。この作品に登場する女性は皆、驚くほどだよ。観てもらえば、わかると思う。

「この役を演じるのは、まっさらなキャンバスと戯れるようで楽しかったよ」

13/難しいテーマを扱った作品ですが、演じるのは大変でしたか?

一番難しいと思ったのは、あれだけ傷つき、苦しみを背負い続けて、その痛みが自分の血管を流れ、混沌とした、自己破壊的な行為に向かわせ、それがついに母親の葬儀で溶けていく様子を演じることだった。第1話「バッド・ニュース」の中のいくつかのシーンはホテルの一室で撮影されたんだけど、かなり大変だった。彼がホテルの部屋をめちゃくちゃに荒らして、完全に独断場だったよ。統合失調症で、頭の中で色々な声が聞こえる。それらの声が会話を始めるんだ。独り言だよ。この撮影の日は奇妙だったよね。僕はこれまでの経験で、撮影の仕事はスクリーン上に留めておくことを学んだ。家に帰るために車に乗り、ラジオをつけ、家のドアを開ける頃には仕事モードから切り替わっている。が、この日は違った。「今日はどうだった?」「死んだ親父に会ったよ。彼にレイプされるかと思い、だから左の足首にコカインを打ち、ホテルの部屋をめちゃめちゃに荒らして、ヘロインの過剰摂取になりかけたところで起きたんだけど、辺りは吐瀉物と血だらけで、針が散乱していた。ほら、いつものことじゃないか!」

14/シャーロック・ホームズを演じたあなたにこの質問をするのはおかしいかもしれませんが、パトリック・メルローズには熱狂的なファン層が存在しますね。プレッシャーはありましたか?

ああ、確かにプレッシャーは感じたし、少しひるんだよ。もちろん、これまでも文学作品上のアイコン的な役を演じてそう感じたことはあった。でも「シャーロック」ではもっと革新的なことをやったんだ。それで新しいファン層が開けたよね。僕以前に演じた俳優は多くいたし、僕の後にも多く出てくるだろう。フィクション作品の中で、まさに一番多く映像化された人物じゃないかな。これは2つの試みのうちの1つなんだ。これだけよくできたフィクションを読んでいる時、読者一人一人には自分だけの映画が流れていて、長い救済の話を読むことは個人的な体験になるんだ。みんなのパトリック・メルローズになれる人はいない。といっても、これだけ顔の技術が発達したら、別の俳優の顔を僕の頭にくっつけて、ニコラス・ケイジのパトリック・メルローズなんていうのもありえるかもしれないね。

15/視聴者にとって見どころは何でしょう?

そうだね…。この作品に深く関わっているので、自分を売り込むことになるからこの手の質問はあまり気が進まないけれど、僕が思うに、人間っていうのは予期せぬものを求めるんじゃないかな。視聴者の皆さんには、若手からベテランまで人気俳優たちが演じているこの作品の素晴らしさを楽しんでほしい。そして原作を美しく撮影したのを見てほしい。エピソードごとにビジュアルは全く異なり、それにこの脚本には、原作にはないオリジナル性もあるんだ。この作品を観た人には、ぜひ原作を読みたいと思ってほしいな。最初に「シャーロック」が放映された時、原作も飛ぶように売れたんだよ。それでコナン・ドイルが新時代に入った。原作の「パトリック・メルローズ」シリーズは、21世紀における傑出した文学作品だ。時を超えて読まれるだろう。僕たちのドラマバージョンも、そうあることを願いたいね。

※「The Child in Time(原題)」は『つぐない』のイアン・マキューアンによる原作小説(邦訳『時間のなかの子供』中央公論社・絶版)をベネディクト・カンバーバッチ主演で映像化した、2017年英BBC作品。日本では2019年に「STAR CHANNEL MOVIES作品」として劇場公開予定。

Interview

「僕には一生のうちに演じたい役が2つあって、これはそのうちの一つなんだ」

01/本シリーズに出演したきっかけは?

原作となったエドワード・セント・オービンの「パトリック・メルローズ」シリーズの権利を持っているマイケル・ジャクソンとレイチェル・ホロヴィッツが、僕のところにきたんだ。原作を読んだことのある役者はごまんといることはわかっていたし、きっとみんな「なかなか面白そうな役じゃないか。やってみたいな」と思ったと思うんだ。だから僕は、極めてラッキーだったと言えるよね。ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい場所にいたのだと。Reddit〔アメリカ最大級のオンライン掲示板〕にこの役をやりたいと書き込んだら、電話がきたんだよ!

当時NYにいた僕に、会いたいと言ってくれたんだけど、約束した朝食に僕は少し遅刻してしまったんだ。ドキドキしたよ。だって会う前日の夜そして当日の朝だというのに、まだ最後の2エピソードを大急ぎで読みなおしている途中だったのだから!その時はまだ、彼らが既に僕に決めていたことを知らなかったから、この傑作をTVドラマ化するんだという明確な構想を話してくれた時も緊張したままだったよ。

02/パトリック・メルローズとはどんな人物でしょう?

パトリックは、悲惨な子供時代から決別しようと必死にもがいている人物で、そのため、心の居場所も失ってしまった。薬物中毒に陥り、自暴自棄だったが、実に面白く聡明な人物でもあった。この作品のコアなテーマは、僕自身でもなじみのある世界のものだと思っていて、この大きな苦しみを抱えながらも、犠牲者の立場から生還者へと生まれ変わる。

そんな、とんでもない旅をしているこの特殊な男の視点を通して、特権階級の世界をひっくり返せるのでは、と思ったんだ。彼は、この状況下である意味、最後まで勝ち抜いたチャンピオンだよね。そして、崩壊しつつある上流社会に鋭く切り込んで、暴き出していく。まるで鋭いメスをもった検視官のようにね。こうした流れがまるで喜劇のように展開し、特権社会特有の権力は、話が進むにつれ失われていくんだ。一人の人間の一生としては、かなり壮大なスケールだよ。無垢な子供時代から、怯えて自暴自棄な20歳の青年を経て、30代では正気を取り戻し、結婚して父親になるー孤児を養子に迎えてねーという人生の変遷。これほど描いてみたくなるキャンバスはないね。

03/役作りのために、薬物中毒の人たちと事前に話をしましたか?

はい。リサーチ会社のシェールとラッセルにお世話になったよ。素敵な夫婦だった。

アドバイザー的な立場でこのドラマづくりに関わってくれ、実際に様々な薬物乱用や薬物中毒に苦しむ人の救済団体のアドバイザーを務めているんだ。彼ら自身も薬物中毒に苦しんだ経験があって、そのことを包み隠さず話してくれたことで、リハーサルや撮影現場など全制作プロセスを通してとても励みになったし、サポートしてもらった。もちろん、テディ自身〔原作者エドワード・セント・オービン〕にもね!薬物にまつわるビジネスや器具などは非常に複雑で、それらを理解することは、薬物のからだと心への影響を理解するのと同じくらい重要だった。でも、一番大事なのは、薬物を欲してしまう動機なんだ。このような破壊的な薬物を、どうして心が欲するのか。何に替わるものなのだろうか。僕が話をした人たちは、全員こう言っていたよ。ヘロインは、母親からは決して得られなかった、包まれるような温かさ、だと。自己の存在に苦しむことからの解放。といっても、現実逃避だけではないんだ。

特にオピオイド(アヘン)系よりもっとアッパー系の薬物は、中枢神経の緊張と記憶を鈍化させ、自分自身の深い井戸へと突き落とし、そして自分でつくりあげた渦へと落ちていくんだ。コカインなんか、粉末結晶状のジェットエンジンだね。極上のハイになったところで、ヘロインで軟着地する、というところかな。もちろん、テクニカルな部分に忠実でなければならなかった。僕たちがドラマで出会う主人公は、既に大変な金持で、経験豊かなヤク中なんだよ。だから、薬の打ち方から身体や心への影響までを正しく理解することは、極めて重要なことだったんだ。

04/原作者のエドワード・セント・オービンにはお会いしましたか?

はい。社交の場での交流はあったけど、役が決まってからは、急いでテディに会うようなことはしたくなかった。彼やパトリックのことを理解しようと、あまり早くからもがきたくなかったからね。

でもある日、パーティーで彼と鉢合わせたんだ。テディは「ドラマ化の話って本当なのかい」と聞いてきて、僕は「もちろんさ」と答えたよ。彼は優しくて、一緒にいて楽しかった。見事なまでに博識で、インテリで、ウィットに富んでいた。それと同時に驚くほど思いやりがあって、上品だった。彼はむしろ自己嫌悪というより堂々とした皮肉屋で、原作とはそこが違った。作中のパトリックは自己嫌悪が強く、それは魅力に欠ける要素だからね。こういう人は、遠くから見ている分には面白いけど、実際に関わりたくはないものだよね。テディはパトリックが自分の分身だということを隠さない。あれほどの悪から、これほどのよいものが生まれるなんて、奇跡だよ。そのことだけでも彼を尊敬する。もちろん、それを文学作品に仕上げたことはもっとすごいけれども。

05/2012年当時、この役をやりたいと仰っていましたが…

オーストラリアでファンの集まりがあった時、そう言ったね。ハムレットもやりたい、とも言ったんだ。この2つが、僕が一生のうちに演じてみたい役だったから。2011年に原作シリーズ最後のエピソードが発表され、それからやっと僕はこのシリーズを読み始めたんだ。ひどいよね。熱烈なファンもいるというのにね。でも僕は、あの世界に少し理解があったから、うまくいくような気がちょっとしていたんだ。きらびやかだけれど冷たい、皮肉の満ちた上流社会を知っていたから。僕の祖母がこう言ったことがある。「なんと退屈なのでしょう。そのお話をするのは、やめてちょうだいな。なんとも退屈ですからね」ってね。「退屈」って…。まるで誰もあらゆる感情や関心を表に出さず、全くの無関心を装うようだよね。すごく小馬鹿にしている感じがするだろう。言っておくけれども、僕の祖母は面倒見がよくて、親しみやすい人だったよ。ただ、社会的圧力のようなものがあって、物事をなんでも軽く受け止め、お酒の席での軽い会話のようにしてしまうんだ。

「この作品は、本当の豊かさというのはいかに愛であるか、という話なんだ」

06/この作品に出てくる薬物の乱用や中毒といった問題は、貴族階級にもおきているのですね?

はい。だから不安としてあったのが、僕たちはこれを上流社会特有の問題として捉えているのか、この作品が誰かを排除や疎外してしまわないか、ということなんだ。薬物中毒に苦しむ人、薬物乱用を経験したことのある人というのは、残念なことに、どの社会的階層にも存在して、だからこのテーマは誰にでも通じるような、普遍性があると思った。古い社会の振る舞いや、上流社会の中でも最悪の人たちの態度など、彼らの断末魔の苦しみをレーザーメスのように鋭く切り込んで暴けると思ったのだ。

彼らは、財産や富について知り尽くしているかもしれないが、この作品は、本当の豊かさというのはいかに愛であるか、真実の愛、無垢で純粋な愛というものがいかに最後は勝つものなのか、ということを教えてくれるんだ。といっても、そこに到達するにはとんでもない苦労が伴うけれどね。

07/演じるだけでなく、プロデューサー(製作総指揮)も兼ねていますね…

はい。僕が作品に関わって大分経ってから、制作会社をつくったんだ。これまで沢山の長編素材が送られてくるんだけど、2時間あるいは2時間半という映画の枠に収めきることができないんだよね。だから、自分たちで映画化できそうな原作を探して脚本をつくった方が理に適うということになって。それが僕たちの長所ともいえるのだけれど、僕は自分が開拓した作品を演じることと同じくらい、僕が出演しない作品も開拓したい気持ちがあるんだ。

08/プロデューサーと主演を兼ねることの難しさは?

時に応じて、違う顔を持たなくてはならない。それがややこしく感じる時があったけど、大体は、準備期間や制作前の段階では僕はどちらかというとプロデューサーで、演技の準備中でも時間の許す限り制作チームとキャストの取りまとめをしていたよ。その段階が終わると、みんなに引き継いでもらうわけだ。実際に撮影が始まる頃には、僕がプロデューサーとしてできる仕事はほとんどなくなっている。演技の方で忙しくない時は、プロデューサーやディレクターの仕事の方でできることを探すけれども、5つ全てのエピソードをエドワードが監督しているところを見ていると、今は僕の出番はないね。僕には小さな子供が2人いるし、その世話で手一杯というところかな。

09/「ドイツ1983年」のディレクター、エドワード・ベルガーから脚本のデヴィッド・ニコルズやキャストまで、豪華メンバーの揃ったチームですね。

ええ。多くの優秀な監督が候補に挙がったんだけれど、エドがずっと第一候補だった。彼に実際会った時、エドはこう言ったんだ。「この原作のシリーズは、5つの全く違う作品から構成されていると僕は思っている。カメラワークだけじゃなくて、ストーリー性が非常に大事だよね。」実は僕は、ユーモアと上流社会のことをうまく表現できるか、少し心配していたんだ。この作品の鍵でもあるからね。でもエドはユーモアのセンスに溢れた人だったよ。ドイツ風ユーモアは英国風ユーモアに極めて近いしね。でも彼はスイス系オーストリアだっけ。どちらにしても、彼は素晴らしいユーモアのセンスの持ち主だよ!

10/デヴィッド・ニコルズの起用を決めたのは、あなたですか?

いいや。マイケルとレイチェルが既に彼と話を進めていたんだ。エドはまだ関わっていなくって、撮影監督のジェームズ・フレンドもいなかった。

才能あふれるヘアメイクのカレン・ハートリー=トーマスも衣装デザイナーのキース・マッデンもまだだったよ。

11/父親役のヒューゴ・ウィーヴィングとは、あまり一緒に演技をする機会はなかったのですね?

はい、残念ながらね。僕は彼を敬愛している。彼には怖いくらいの才能があるし、この役の彼は並外れていた。カリスマ性があり、すさまじく恐ろくて、自身の魂を痛めつけられたように、息子を痛めつけるという父親…。彼がパトリックにしたことは、相当にひどい。子供のパトリックは破壊されてしまった。ヒューゴはこの役に全力投球で挑戦したよ。

でも彼ほど優しくて穏やかで笑わせてくれる人はいないよね。役者の中で、撮影クルーから一番愛されていたのは彼じゃないかな。

12/ジェニファー・ジェイソン・リーについてはどうですか?

彼女とはもう少し長く一緒に撮影できたよ。歳を取ってからのエレノアとしてね。彼女は素晴らしかった。変化していく様子やカメラを前にした演技もすごかった。若い頃のエレノアとは共演する機会があまりなかったけど、編集前の映像は観たよ。僕がアトランタのどこかで、「ドクター・ストレンジ」として「アベンジャーズ」の撮影をしていた時にね。彼女の選択は大胆だし、監督やスタッフとの深い信頼関係があるから、スクリーン上で実に美しく映るよね。演技中の彼女は、本当に素晴らしいよ。ニコラス・プラットを演じたピップ・トレンスも、全編を通じて見事だった。発言は常に機知に富んでいて、社会的に他人を利用することを何とも思わないような、無敵な人物。

けどその実、危ういもろさを抱えていて、それが観ている人の心を打ち砕くよね。ホリデー・グレインジャーは、若い頃は権力にあらがう魅力的なヒッピーだったんだけど、それが物質主義になって、体制側の人間になるんだ。彼女からはとても多くを教わったよね。プラサナ・プワナラジャと僕は友人なんだけど、ずいぶん長い間一緒に仕事をしていなかった。彼が演じたのはジョニー。僕の妻役アンナ・マデリーとは、BBC作品の「The Child in Time(原題)」※で一緒だった。だから気心も知れていたし、長い間苦労を共にする妻マリー役として最高だったよ。難しい役どころだったけれど、非常に美しく、力強く感動的に演じてくれたよ。パトリックの長年の友人かつ情事の相手役ジュリアを演じたジェシカ・レインもファンタスティックだった。素晴らしいくらい意地の悪い女性の役でね。皮肉に満ちた無関心から深い絶望への旅を見事に演じ切ってくれた。この作品に登場する女性は皆、驚くほどだよ。観てもらえば、わかると思う。

「この役を演じるのは、まっさらなキャンバスと戯れるようで楽しかったよ」

13/難しいテーマを扱った作品ですが、演じるのは大変でしたか?

一番難しいと思ったのは、あれだけ傷つき、苦しみを背負い続けて、その痛みが自分の血管を流れ、混沌とした、自己破壊的な行為に向かわせ、それがついに母親の葬儀で溶けていく様子を演じることだった。第1話「バッド・ニュース」の中のいくつかのシーンはホテルの一室で撮影されたんだけど、かなり大変だった。彼がホテルの部屋をめちゃくちゃに荒らして、完全に独断場だったよ。統合失調症で、頭の中で色々な声が聞こえる。それらの声が会話を始めるんだ。独り言だよ。この撮影の日は奇妙だったよね。

僕はこれまでの経験で、撮影の仕事はスクリーン上に留めておくことを学んだ。家に帰るために車に乗り、ラジオをつけ、家のドアを開ける頃には仕事モードから切り替わっている。が、この日は違った。「今日はどうだった?」「死んだ親父に会ったよ。彼にレイプされるかと思い、だから左の足首にコカインを打ち、ホテルの部屋をめちゃめちゃに荒らして、ヘロインの過剰摂取になりかけたところで起きたんだけど、辺りは吐瀉物と血だらけで、針が散乱していた。ほら、いつものことじゃないか!」

14/シャーロック・ホームズを演じたあなたにこの質問をするのはおかしいかもしれませんが、パトリック・メルローズには熱狂的なファン層が存在しますね。プレッシャーはありましたか?

ああ、確かにプレッシャーは感じたし、少しひるんだよ。

もちろん、これまでも文学作品上のアイコン的な役を演じてそう感じたことはあった。でも「シャーロック」ではもっと革新的なことをやったんだ。それで新しいファン層が開けたよね。僕以前に演じた俳優は多くいたし、僕の後にも多く出てくるだろう。フィクション作品の中で、まさに一番多く映像化された人物じゃないかな。これは2つの試みのうちの1つなんだ。これだけよくできたフィクションを読んでいる時、読者一人一人には自分だけの映画が流れていて、長い救済の話を読むことは個人的な体験になるんだ。みんなのパトリック・メルローズになれる人はいない。といっても、これだけ顔の技術が発達したら、別の俳優の顔を僕の頭にくっつけて、ニコラス・ケイジのパトリック・メルローズなんていうのもありえるかもしれないね。

15/視聴者にとって見どころは何でしょう?

そうだね…。この作品に深く関わっているので、自分を売り込むことになるからこの手の質問はあまり気が進まないけれど、僕が思うに、人間っていうのは予期せぬものを求めるんじゃないかな。視聴者の皆さんには、若手からベテランまで人気俳優たちが演じているこの作品の素晴らしさを楽しんでほしい。そして原作を美しく撮影したのを見てほしい。エピソードごとにビジュアルは全く異なり、それにこの脚本には、原作にはないオリジナル性もあるんだ。この作品を観た人には、ぜひ原作を読みたいと思ってほしいな。最初に「シャーロック」が放映された時、原作も飛ぶように売れたんだよ。それでコナン・ドイルが新時代に入った。原作の「パトリック・メルローズ」シリーズは、21世紀における傑出した文学作品だ。時を超えて読まれるだろう。僕たちのドラマバージョンも、そうあることを願いたいね。

※「The Child in Time(原題)」は『つぐない』のイアン・マキューアンによる原作小説(邦訳『時間のなかの子供』中央公論社・絶版)をベネディクト・カンバーバッチ主演で映像化した、2017年英BBC作品。日本では2019年に「STAR CHANNEL MOVIES作品」として劇場公開予定。

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原作小説

第1巻「パトリック・メルローズ1
ネヴァー・マインド」10/18発売
毎月1巻、5カ月連続刊行!

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『パトリック・メルローズ1 ネヴァー・マインド』
エドワード・セント・オービン/国弘喜美代・手嶋由美子訳
出版社:早川書房 判型:46判並製 発売日:2018年10月18日発売
本体価格:1,500円+税

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