
政変が続くバングラデシュ。家族が反政府組織に属していたことに加え、チェスの⼤会で勝利を重ね続けるファヒムに対する妬みが原因で、徐々にファヒムと家族は脅迫を受けるようになっていた。⾃分たちの⾝に危険を感じた⽗親はまだわずか8歳だった少年・ファヒムを連れ、⼆⼈だけでパリへ国外脱出、そこでチェスのトップコーチであるシルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)と出会う。独特な指導をするかつての天才チェスプレーヤーでもあるシルヴァンと、天才頭脳で⼝達者なファヒムはぶつかり合いながらも、チェスのトーナメントを⽬指して信頼関係を築いていく。そんな中、移⺠局から政治難⺠としての申請を拒否されたファヒムの⽗親は、⾝の置き所が無くなり姿を消してしまう・・・。迫りくる強制送還のタイムリミット、その脅威から逃れるには、解決策はただ⼀つ。ファヒムがチェスのフランス王者になることだった。
ファヒムの才能をいち早く⾒抜き、彼をフランス王者にするために厳しくも愛情溢れた熱⼼な指導に没頭するファヒムのチェスコーチ・シルヴァンを演じるのはフランスの誇る名優・ジェラール・ドパルデュー(『シラノ・ド・ベルジュラック』)。監督が実際の“ファヒム”の指導者であるグザヴィエ・パルマンティエに出会った際に「彼の恰幅の良さ、優しさ、激しい気性を知りまっさきに思い浮かべたのがジェラール・ドパルデューだった」という。「私はおめでたい⼈間ですから、すぐにジェラールがぴったりだと思い、1 秒たりとも断られる可能性を想像しませんでした。それでもジェラールのエージェントに脚本を送った時は多少ドキドキしましたよ。脚本は140 ページあり、この⻑さがジェラールのやる気をそぐんじゃないかと怖くなったのです。でも違いました。48 時間後に彼はOKの連絡をくれました。」とその喜びを語る。
チェスの天才少年ファヒムを演じたのは、これが演技初挑戦であり、彼⾃⾝も撮影が始まる約3ヶ⽉前にバングラデシュから政治亡命者の息⼦として逃れてきたというアサド・アーメッド。ある⽇突然⽗親から「いとこと⼀緒にでかけろ」と⾔われた先が映画のキャスティング現場だったと⾔う。本作について「脚本の内容を聞いた時、とても感動しましたし、バングラデシュの⾸都ダッカで起こっているいろいろな問題を思い出しました。ファヒムの物語は僕のものではありません。でも僕が経験してもおかしくなかった。」「この映画を通して、⼈々が移⺠の⽣活が簡単ではないと分かってくれることを願います。」とその想いを語る。
監督は、俳優としても活躍するピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル。本作を製作することになったきっかけについて彼は「2014 年2 ⽉、テレビで14 歳のバングラデシュ⼈の少年が、彼のこれまでの⼈⽣を語った本『Un roi clandestin(密⼊国者の王さま)』<⽇本未発売>についてインタビューを受けていたのを⾒たのです。それまで彼のことをまったく知りませんでしたが、落ち着いた声で話すこの少年に魅了され⼼を揺さぶられたのです。なぜ8 歳の時に急に⺟親から引き離され、国を出なければならなかったのか。⽗親と⼀緒に⾔葉も⽣活習慣も知らないフランスに降り⽴ち、その4年後に、不法滞在のホームレスであったにもかかわらず、どうやって12 歳以下のチェスのフランス王者になったのか。すごい道のりです!私の映画作家としての⾎が体をひと巡りし、すぐにこの映画を作りたいと思ったのです。」と述べている。
政治難⺠の⽗親に伴われ、⺟親からも引き離され、わずか8歳で⾒ず知らずの街で⽣きることになったファヒムが“チェス”という共通項を通してさまざまな⼈と出会い、信じ合うことでその才能が花開き、⽬標に向かってひたむきに⽣きる姿に⼼打たれる感動の実話をもとにした本作。
少年ファヒムと⽗親は⺟国バングラデシュを追われ、家族を残してパリにやってくる。フランスに到着してすぐ、強制送還の可能性に怯えながら、亡命者として政治的保護を求める戦いが始まる。そんな中、チェスの才能を持つファヒムはフランス国内で最も優秀なチェスのコーチの1⼈、シルヴァンに出会う。警戒⼼と魅⼒の間で揺れ動きながら、彼らは互いを知り、次第に友情を築いて⾏く。チェスのフランスの国内⼤会が始まる⼀⽅でファヒムは強制送還の脅威にさらされる。解決策はただ1つ。フランス王者になることだった。
監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
出演:ジェラール・ドパルデュー、アサド・アーメッド、ミザヌル ラハマン、イザベル・ナンティ