荒野のただ中にある牧場で、たった一人で馬を育て、それを売って生計を立てている屈強な男バルデス。ある日、牧場に迷い込んできた少年ジェイミーとバルデスの牧場の所有権をめぐって、土地の有力者マラルと敵対することになったバルデスだが、マラルの妹キャサリンと互いに惹かれ合う関係に。それを知ったマラルは激怒し、バルデスの命を狙い始めるが…。
『OK牧場の決斗』『荒野の七人』など数々の傑作西部劇で知られる、名匠ジョン・スタージェス監督の最後の西部劇作品となった作品。
1970年代といえば、すでにハリウッドでは往年の正統派西部劇はニューシネマ的な味付けの新感覚ウエスタンに取って代わられ、一方でイタリア製の派手なアクションを売りにしたマカロニ・ウエスタンが隆盛していた時代。そんな時代にあって、本作は古き良きハリウッド製西部劇の牧歌的な抒情の中に、マカロニ風の"一匹狼VS悪党団"の対決の図式をはめ込んだかのような、ハイブリッドな味わいが不思議な印象を残す異色作である。
主人公バルデスを演じたのはチャールズ・ブロンソン。寡黙な一匹狼が実によく似合う。日本でのブロンソンのイメージといえば、やはり何と言っても、1970年からTV放映された某男性化粧品メーカーのCM、「う~ん、マンダム」だろう。ブロンソンも年齢や髪型や服装によって微妙に印象が変わるが、本作のブロンソンは日本人が抱くイメージのど真ん中ストライク! "お手本"のようなブロンソンが拝めるのは、ファンにとっては嬉しい目の保養だ。"目の保養"といえば、本作の紅一点がキャサリンを演じた美人女優ジル・アイアランド。ご存じの通り、ブロンソンの実生活での妻である。ブロンソンの愛妻家ぶりは有名で、ジルが出演した映画のほとんどはブロンソンとの共演作だ。片時も妻と離れたくなかったのだろうが、"女にうつつを抜かさない男"のイメージを愛する男性ファンの中には、再三の夫婦共演に少々複雑な思いに駆られる向きもあったに違いない。
少年ジェイミーを演じたヴィンセント・ヴァン・パタンは、1970年代に人気を博したティーンエイジ・スター。のちにプロのテニス選手となり、1981年開催のセイコー・スーパー・テニスでは、あのジョン・マッケンローを破って優勝した。本作ではバルデスを慕って下働きをする素直な少年を爽やかに演じ、バルデスとの師弟関係を通して一歩大人になっていく思春期の少年の成長物語として、名作『シェーン』を思わせる“古き良き西部劇”の詩情を漂わせている。