映画アンソロジー・シリーズ 『スモール・アックス』(全5話)
推薦コメント一覧(順不同)
歴史書や思想書を読むだけでは得られない、喜怒哀楽の激しい感情と、最高の音楽と、新しい気づき。
5つのエピソードで立体的に英国カリブ系コミュニティを描いた『スモール・アックス』で、スティーヴ・マックイーン監督は映画以上の「何か」に到達している。
宇野維正(映画、音楽ジャーナリスト)
イギリスに住むカリブ系黒人に対する白人社会の苛烈で暴力的、かつ陰湿な差別。だが、そこに一筋の光を差し込ませる5話のアンソロジー。世界がまたしても戦火に見舞われたいまだからこそ、いっそう心に染みてくる。
大谷昭宏(ジャーナリスト)
本編で使用されている音楽、登場人物のファッションがとてもツボで、イギリスに住むジャマイカ人(カリブ諸国)の文化が華麗に描写されていて存分に楽しめました。『マングローブ』は実話と思うと悔しくて涙を流さずにはいられなかったです。でも、そんな中でも時折訪れる安堵の時間が柔らかく力強く美しかったです。
『ラヴァーズ・ロック』は大学時代を思い出すようなシーンもあってノスタルジックな気分になりました。
Daichi Yamamoto(アーティスト)
初めてジェームズ・ボールドウィンを知った時と同様の、強烈な衝撃を受けました。
5つのストーリーに込めた、怒り、情熱、愛、思いやり。
BLMを心の底から叫ぶ、スティーヴ・マックイーンの声が聞こえる。今観るべき、傑作です。
『ブラックパンサー』の“シュリ”がブラックパンサー党のリーダーを演じるウィットも好きです。
立田敦子(映画ジャーナリスト)
全5話、異なるそれぞれのストーリー全てに心に刻まれる言葉と、流れる至極の名曲の数々!喜怒哀楽の感情を掻き乱され揺さぶられた人類史、記録、記憶、伝えるべきメッセージ!
今と昔、何が変わって何が変わらないのか。"今"この作品に出会えたことに感謝します。是非、良い音で観て感じて欲しい!
Chozen LEE(レゲエアーティスト(FIRE BALL・THE BANG ATTACK)
マックイーン監督はかつてインタビューで、『それでも夜は明ける』を撮った理由を「私の祖先は奴隷。その現実を描いた映画がそれまでなかった」と語り、「私は『黒人監督』と言い表されるが、その前に人間だ」と言った。その言葉の重みが、英国のカリブ系の現実をつづったこの5作品で迫り来るはずだ。
藤えりか(朝日新聞記者)
スティーヴ・マックイーンによる、愛と闘争とリディムで溢れかえった特濃アンソロジー。これを観たなら、UKブラックの作るレゲエやドリル、グライムがもっと好きになるはず!
長谷川町蔵(文筆家)
レゲェという音楽の世界的な人気は、そもそも第二次大戦後にイギリスに渡ったカリブ海からの大勢の移民の存在によるものです。彼らの立場から語ったこの見事な一連のドラマは多くの英国人にさえ知られていない現実で、制度的な差別を理解するためにも必見です。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
英国のカリブ系黒人たちの苦難の歴史の中に時折訪れる、祝祭的な場面の音楽性が涙が出るほど素晴らしい。 唯一無二の作品だと思います。
山崎まどか(コラムニスト)
1960年代後期から70年代初期にかけて、イギリスに住むアフリカン・カリビアン系の人たちが受けてきた弾圧、人種差別。それから50年を経ても世界中で分断が進み、人種差別はなくならない。不屈の意思でそれに立ち向かうマングローブの9人たち。叩かれても叩かれても立ち上がり、弾圧に立ち向かう彼らにいつの間にか感情移入していた。
吉岡正晴(音楽ジャーナリスト/DJ)
完璧な構図の連続、匂いまでしそうな質感で語られる密度の高い群像劇。無言の瞬間にも想像させられる、経験の様々、その痛み、希望。英国からあまり輸出されて来なかった方の、英国の物語です。
シマ・シンヤ(漫画家)
『スモール・アックス』×シマ・シンヤ コラボイラスト