『ゴーン・ガール』原作ギリアン・フリン衝撃のデビュー作をHBO®が完全実写化した『KIZU-傷-』10/15(⽉)より日本独占最速放送スタート!
主演エイミー・アダムズのインタビューをお届けします!
Q:あなたにとって、このプロジェクト最大の魅力は何でしたか?
エイミー・アダムズ(以下:AA):テレビと私の関係というのは長く音信不通だった友人同士のようなもので――終わるべくして終わった古い関係だから、そのままそっとしておくつもり、と考えていたのだけど、それ以降のTV界は方向性がまったく変わって行ったわ。それに、このドラマに携わっている人々はみんなすごい人たち揃いだからよ。ギリアンの作品には長年魅力を感じていたの。だって彼女が生み出すのはすごく欠点の多い女性ばかりですもの。ほんの短い間だったけど、『ダーク・プレイス』への出演を迷っていた時期があったの。でもそれから妊娠して、“きっとあの映画は無理だわ、特に今は”と思ったのよ。
Q:カミルは間違いなく欠点のある女性……
AA:そうよ、欠点がある。でも変わろうと努力もしているわ。私は本当に彼女のことが好きなの。仲良く付き合うか、というとどうかしらね。それは私にとっては良くないかもしれないからよ。きっと彼女のことを好きになり過ぎてしまうと思うから。だからこのキャラクターにはとっても魅力を感じていたけれど、TV界に戻る事にはためらいを覚えたわ。この手のドラマの場合、拘束時間も長期間になるし、撮影スタイルも異なるから対処しなくてはならないことも山ほどある。すさまじいスピード、猛烈な勢いで制作が進むわ。それでいて私は母親でもあるから子供のことも常に気になるの。仕事と育児の両立が必要だし、それは私にとってはとても重要なことなのよ。
でも、ギリアン(・フリン)、マーティ(・ノクソン)、ジェシカ(・ロアデス)、それにクリエイティブチームと一緒にいると“なんて素晴らしいのかしら”と思ったわ。この物語、カミルの物語だけでなく、一家の暴力や虐待の過去にも命を吹き込むようなアイデアを持った女性たちと仕事ができるなんてね。彼女たちがアイデアを模索する工程はとにかくどれも興味深かったの。さらに今回はプロデューサーという職務にも声をかけてもらったことは非常に魅力的だったの。このドラマの制作陣に「私はこうするつもりよ」と意思表示をして、参加してからジャン=マルクを演出家として提案したのよ。彼とはジャニス・ジョプリンの映画の企画段階で一緒に仕事をした際に、彼が苦痛に対して向き合う姿勢に他の人とは違うものを感じたからよ。彼の痛みの描き方にとても魅力を覚えたの。痛み周りをまわりながら核心にも触れているからよ。他にも数人の演出家と面接したけれど、結局はいつもジャン=マルクに戻っていたわ。
Q:あなたは入念に役作りのリサーチをする方ですね。今回の複雑かつ心に傷を負っているカミルという女性、しかもまだ完全にすべてをさらけ出していないキャラクターの役作りについては、どこから着手されましたか?
AA:まずは原作小説からよ。多くのことがそこに描かれているわ。何しろ小説自体の語り手がカミルだから、彼女の思考が内なるセリフとして沢山描写されているの。毎日、その日に撮影するシーンと同じ小説の部分を読むことが日課になっていたわ。そして各シーンで彼女が何を語っているのかに目を通していたの。セリフでは語られないカミルの豊かな感情や気持ちを思い返すのにとても役に立ったわ。
そうですね、小説内の彼女のコメントにはまさに彼女が見ているすべてが綴られていますね。
AA:その通りよ。彼女を演じている時はいつもこの心の声のことを念頭に置いていたわ。とても愉快で、悲しくて、控え目で、脆くて、いつも努力しては失敗している。それでも努力し続けているの。
Q:この恐怖、飲酒、自傷行為をどう表現するかを決めるのは難しいことでしたか?これにより、最初の頃、視聴者は彼女の抱える苦しみのすべてには気づきませんね。
AA:そこはとても興味深いポイントなのよ。といのも本当はお酒が欲しくて、心の中はそのことでいっぱいだから。そこは気をつけて演じていたわ。カミルを演じていて、アル中を演じるのはどんな感じ?と聞かれると悩ましかったわ。だって彼女は1日中飲んでいたから。そして大抵はそれでも普通の状態でいられるの。いつも飲んでいるからそれでもまともでいられるのね。でも飲みすぎれば体調も崩すし、飲んでないと何だか違和感を覚えるのよ。
Q:自傷行為については、研究されましたか?
AA:ええ、したわ。ギリアンに勧められた中に“The Bright Red Scream”というタイトルの本があったの。読んだことはある?とてもダークで自傷行為について書かれているわ。彼女にこの原作小説を執筆した際にどんなリサーチをしたのか質問したら、この本を進められたの。でも、普段は私の本棚の奥に隠してあるわ。だって人に貸したいと思うような本じゃないから。自傷と苦痛の言語についての本よ。一人称で書かれていて、自傷行為をしてしまう人たちの物語と彼らの自傷の歴史が綴られているわ。
Q:どれが今回の役作りにどのように役に立ちましたか?
AA:自傷というのは内的な苦痛を外的に発現することなのだと思ったわ。どんなことでも強迫的な行動のきっかけになってしまう、そういう心理的なものなのね。カミルも治ってはいないわ。ただ、自傷していないだけ。だからそれは勝利といえる。でも、未だにある種の行動には走ってしまうけれどね。
Q:物語の過程で、代理ミュンヒハウゼン症候群であることも明らかになっていきますね。特に子を持つ親として、演じるのは難しかったと思うのですが……。
AA:そうね。この他者の関心を渇望する何とも奇妙な症状についても沢山のリサーチをしたけど――私にとってはかなりクレイジーなことだと思ったわ。私の持つ親としての本能のすべてに反するし、まったく想像もできないことよ。これまでに娘が2度ほど病院に連れて行かなきゃならないような怪我をしたことがあったけれど、また病院に来たいなんて微塵も思わなかった。トラウマになるわ。多くの人がきっとそうであるように私も多分、大半自分で自分のコントロールができるけど、ある程度それができない部分があることも好きなのだと思う。例えば、ちょっと怖い思いをしたり、ジェットコースターのスリルを味わったり、少しスピードを出して車を運転したり、私、バイクが好きだから――つまりはその手のことよ。アドレナリンが出る感じが好きなのね。それに私よりもずっと危険な冒険をする人たちにも魅力を感じるわ。
Q:自傷行為、家庭内暴力といったテーマですが、毎日ロケ撮影現場で気持ちを切り替えるのは楽なことではなかったのでは?
AA:まずロサンゼルスで撮影して、それからアトランタと北カリフォルニアで3週間撮影したの。だから色んな場所が混ざっている感じね。
Q:役から離れた時、気持ちを切り替えるのは難しかったですか?
AA:もしわたしひとりだったら、イエスよ。今は夫と娘が一緒に来てくれるから。娘が学校に通う年齢になったらどうなるかはまだわからないけれどね。でも撮影で辛い経験をして、自分ひとりでいなくちゃいけない時よりもずっといいわ。できるだけ役柄を家庭に持ち帰らないよう、引きずらないようにトレーニングしなくちゃいけなかった。でも今でも疲れていたり、カミルとしての空間から抜けられない時には眠れなくなることが多いの。そして眠れないとちょっと気持ちが変になるわ。とはいえ、それも年月を経て“オーケイ、今の私がどんな状態かちゃんとわかってる。何も悪くないわ。とにかく仕事にいって、やるべきことをして家に帰ってくればいいの。そして夜ご飯を作って、気持ちが落ち着くことをするの”という風に対処できるようになったわ。
Q:製作総指揮と出演を兼務することは、単に出演するだけとどのように違いますか?
AA:カミルを演じながらプロデューサーも兼務することの面白さは、制作として関わらない時と、しっかり制作に関わらないといけない時があることね。私にとって今回が制作初挑戦になるから色々と学ばなくちゃならないことが沢山あると思うけど、とても楽しいわ。私にとってとても大事なことのひとつはプロデューサーとして現場経験を積むことと、その影響を現場で感じることね。
例えば、「さあ、ここで15分休憩にしない?エキストラのキャストも一息入れられるし、アイスでも食べましょうよ」と言えることかな。これって些細なことだけれど、大きな違いを生むわ。女優をしていると、自分の演じるキャラクターとストーリーに集中するし、それが女優としての責任になる。でもプロデューサーだと、物事をより俯瞰して見ることができるし、違う角度から見ることができるの。キャスティングの話や脚本の話なんかも違う角度から耳を傾けることができてとてもいいわ。私がいいアイデアを出せる時もあるし、全然ダメな時もある。今回のチームが素晴らしいのは、みんながお互いに敬意を払っていて、意思疎通もできて、信頼も置けるの。私のアイデアがみんなの思いと違う時には、ちゃんとそれも話し合うことができて、私が「わかった、じゃあ違うアプローチを考えましょう」と納得して言えるのよ。おかげでとてもいい経験だったわ。
Q:舞台となっている場所の雰囲気というのが、見事に劇中に漂っていました。ご自身の中西部出身という背景が、あのカルチャーを理解するのに役立っていると思いますか?
AA:ええ、もちろんよ。舞台は中西部だけれど、南部の要素もあるわ。とても興味深い場所よ。どういうわけか、私は南部や南~中西部のキャラクターに魅力を覚えるのね。おそらくとても激しい女性の強さがあの独自性の中に隠れされているからかしら。でも中西部の人たちはみんな気さくよ。とにかく、そうね、このドラマに出てくる中西部の雰囲気はとてもクールだし、私たちもアトランタで最高の時間を過ごしたわ。
Q:冒頭の人々の背中を湿らせている汗から、その雰囲気を感じ取ることができました。
AA:あそこはとてもジメジメしているのよ。気の毒に、クリス・メッシーナも汗だらけだったわ。でもあのキャラクターにはピッタリだったわね。
Q:あなたたちは『ジュリー&ジュリア』でも共演していますね。再共演は楽しかったですか?
AA:とても楽しかったわ。このドラマは女性主導の物語だけど、いつもこうして素晴らしい俳優たちが参加してくれて本当にラッキーだと感じているの。クリス・メッシーナ、マット・クレイヴンといったね。とても恵まれていたわ。だって、女性キャストを支えてくれる男性陣がいつも揃うわけではないからよ。彼らがしっかりとサポートしてくれるのを感じられたし、とても心強かったわ。