Special スペシャル解説

「生誕90年特別企画 麗しのオードリー」の関連特集として毎月テーマ別にセレクトした特集を放送!
テーマに合わせたスペシャル解説を毎月ご紹介します。

スペシャル解説

オードリーと映画音楽の巨匠たち

音楽は映画にとって大切な要素の1つ。俳優の演技が、監督の演出意図が、バックで流れるメロディによって生かされることもあれば、台無しになってしまうこともあるからだ。そこで、6月は映画音楽に特化して作品をピックアップ。珠玉のメロディを紡いだ作曲家たちにフォーカスする。

さて、数多い作曲家の中でも、オードリー・ヘプバーンという女優のイメージ作りに大きく貢献した最良のパートナーが、言わずと知れたヘンリー・マンシーニだ。「ティファニーで朝食を」の作曲を依頼された時、すぐに"ムーン・リバー"のメロディが頭に浮かんだというマンシーニ。続いて手がけた「シャレード」では、印象的なメロディが冒頭のタイトルロールで、また、セーヌ川クルーズの背後で効果的に使われている。マンシーニのトレードマークである混声コーラスが、オードリー演じるレジーナとケイリー・グラント扮するピーターの恋のムードを絶妙なハーモニーで後押ししてくれるのだ。

「マイ・フェア・レディ」はブロードウェーの作詞作曲家コンビ、アラン・ジェイ・ラーナーとフレデリック・ロウの代表作だが、映画では著名な指揮者でピアニストでもあったアンドレ・プレヴィンによる編曲が随所で効力を発揮。撮影中に録音スタジオを訪れたオードリーとプレヴィンの2ショットが残されているが、それを見ると作曲家と主演女優がいかにリスペクトし合っていたかが分かる。イタリアが生んだ映画音楽界の巨匠、ニーノ・ロータは「戦争と平和」でオードリー映画とコラボ。ロータと言えば一連のフェデリコ・フェリーニ作品やアカデミー作曲賞に輝いた「ゴッド・ファーザー PART Ⅱ」、「太陽がいっぱい」等が有名だが、「戦争と平和」ではその荘厳なメロディが文豪トルストイの世界観にマッチしている。

「ロビンとマリアン」で、監督のリチャード・リスターは青春コメディ「ナック」の音楽を担当したジョン・バリーに、約10年ぶりに作曲を依頼。しかし、レスターは完成した「ロビンとマリアン」の出来映えに失望したという噂がある。でも、ショーン・コネリーのロビンとオードリーのマリアンが久しぶりに抱擁を交わす場面に流れるメロディは、失われた時間への切ない思いが籠もっていて決して悪くない。どころか、上出来だ。オードリー最後の出演映画「オールウェイズ」はスティーブン・スピルバーグの監督作だから、当然、音楽はジョン・ウィリアムズが担当している。でも、実は彼がオードリー映画に関わったのは2度目で、最初の作品が「おしゃれ泥棒」だったことをご存知だろうか。クレジットは当時使っていた名前、ジョニー・ウィリアムズとなっているので、チェックしてみて頂きたい。
そんな風に、オードリー映画の作曲家たちには知られざる歴史があることを知ってみると、奏でるメロディが少しだけ違って聞こえるかもしれない。

『ティファニーで朝食を』

オードリー映画最大のヒット・メロディ"ムーン・リバー"ばかりが話題になるが、ヘンリー・マンシーニが各シーンのために作曲したスコアも聴きどころ。中でも、ホリーとポールが午前中のマンハッタンに繰り出して、お互いに初めてのことにチャレンジする、劇中でもショーアップ場面に流れるマンシーニ独特のスキャットコーラスをフィーチャーした曲は、何度聴いても心が躍るはず。

『華麗なる相続人』

ニーノ・ロータと共にイタリア映画界を代表する作曲家であるエンニオ・モリコーネが、唯一オードリー映画に曲を提供したのが本作。クレジットが1文字1文字表示される毎に文字の影が徐々に消えて行くユニークなオープニングシーンから、早くもモリコーネならではのくぐもったようなメロディが流れ始める。複雑に入り組んだ物語が、モリコーネのドラマチックな曲を介して綴られていく、と言ってもいいほどだ。

『ロビンとマリアン』

ジョン・バリーと言えばイギリス映画を代表する作曲家だ。誰もが思い浮かべる「007」のテーマや、アカデミー作曲賞と歌曲賞をW受賞した「野生のエルザ」以外にも、映画マニアは脚本を読んで気に入ったバリーが監督の言い値で書いたと言われる「ある日どこかで」を思い出すかもしれない。バリーはレスターの監督作「ナック」の現場で無名時代のジェーン・バーキンと出会い、映画が公開された年に結婚。1児を設け、3年後に離婚。

『オールウェイズ』

受賞したアカデミー賞の数は実に5(うち編曲賞が1)。ノミネーションの総回数は51で、これはウォルト・ディズニーの59に次ぐ記録だ。映画音楽だけでなく、1984年のロサンゼルス・オリンピック以降、アメリカで開催されたアトランタ、ソルトレイク冬季オリンピックの全3大会でテーマ音楽を担当。派手はファンファーレだけでなく、「オールウェイズ」ではオードリー扮する天使ハップの数少ない登場シーンを心に染み入るメロディでバックアップしているジョン・ウィリアムズは、現在87歳。最新作「スター・ウォーズ/エピソード9」(本年12月20日公開)を最後に「スター・ウォーズ」シリーズの作曲を引退すると発表している。

『初恋』

伝説的な作曲家、マヌエル・デ・ファリャ(1876~1946)以降、スペインで最も優れた作曲家の1人に数えられるロベルト・ジェラールが手がけた2本の映画音楽うちの1本(もう1本は同じイギリス映画「孤独の報酬」 )が、「初恋」だ。スペイン、カタルーニャ生まれのジェラールは、フランコ独裁政権の弾圧を逃れて第2次大戦中にイギリスに亡命。そこで手がけたのが、独裁政権へとテロ工作を描いた「初恋」だったというのは偶然ではない気がする。

『ローマの休日』

冒頭の晩餐会のシーンで流れ、ラスト、会見を終えたグレゴリー・ペックが後ろ髪を引かれるように会場を後にする場面で流れる音楽は、「ローマの休日」には欠かせない共演者。作曲はフランス人のジョルジュ・オーリックで、彼は他にも「孤独の報酬」や「悲しみよこんにちは」等、映画史に残る名作を数多く手がけている。弱冠15歳で作曲家デビューし、20世紀前半に活躍した作曲家集団"フランス6人組"の属する才人だ。

『戦争と平和』

「戦争と平和」を含めて、生涯に170本を越える映画音楽を発表しているニーノ・ロータこそは、映画音楽の父と呼ぶに相応しい存在、かと思いきや、本人はあくまでクラシックが本業と言い続けた。確かに、13歳でオペラを発表し、たくさんの協奏曲も残しているから、そう言いたいのも分かる気がする。しかし、特にロータが盟友、フェリーニのために作った映画音楽は、彼のライフワークと呼べる珠玉のアーカイブ。イタリア映画のエッセンスが音符に込められている。

『尼僧物語』

ドイツ生まれの作曲家、フランツ・ワイツマンはマレーネ・ディートリッヒの「嘆きの天使」で注目され、その後、ハリウッドへ。アルフレッド・ヒッチコックの「レベッカ」や「サンセット大通り」、「陽のあたる場所」等、話題作の音楽を次々に手がけ、一躍売れっ子に。「尼僧物語」では冒頭からヒロイン、ガブリエルの行く末を暗示するようなドラマティックなメロディで観客の耳を鷲づかみにしてしまう。

『おしゃれ泥棒』

ジョニー・ウィリアムズ、後のジョン・ウィリアムズが「おしゃれ泥棒」でチャレンジしているのは、気軽な泥棒コメディを脇で盛り上げる耳障りではない軽快なメロディ。「スター・ウォーズ」や「未知との遭遇」、「レイダース/失われたアーク」等、オスカーやグラミー賞に輝いたスピルーグ作品とは異なるテクニックが、そこでは駆使されている。特に、オープニング・タイトルを飾るメインスコアは楽しいと言ったらない。「これから面白いことが始まる!」と観客に思わせるのだ。

『シャレード』

ヘンリー・マンシーニの十八番は物語が最高潮に達したときに流れる美しいオードリー・メロディ。それらはシングルカットされて世界中で高いセールスを記録する。でも、劇中で時々流れる恐怖のメロディもなかなかだ。「シャレード」で言うと、冒頭の殺人シーンに続くオープニング直後の水鉄砲の場面、レジーナがピーターに疑惑を抱くとき、ピーターとスコビーがビルの屋上で格闘するシーン等々。音の緩急がマンシーニの魅力なのだ。

『マイ・フェア・レディ』

アカデミー賞の作曲賞は時代毎にカテゴリー分けが変わっていて、「マイ・フェア・レディ」のプレヴィンに与えられたのは編曲賞。同年の作曲賞は「メリー・ポピンズ」のリチャード・M・シャーマンとロバート・B・シャーマンに贈られている。編曲と作曲が並列していたのは1980年代中頃までで、その後、ゴールデングローブ賞みたいに劇映画とミュージカル・コメディ部門に分けられたこともあったが、2000年代以降は作曲賞に統一された。分かり易くてけっこう。

『ティファニーで朝食を』(c) 2019 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 『華麗なる相続人』(c) 1979 BY Paramount Pictures Corp. All Rights Reserved. 『初恋(1951)』(c) 1951 / STUDIOCANAL FILMS Ltd - All Rights Reserved 『ローマの休日』コピーライト不要 『戦争と平和(1956)』TM & (c) 2019 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 『尼僧物語』(c) Warner Bros. Entertainment Inc. 『おしゃれ泥棒』(c) 1966 Twentieth Century Fox Film Corporation. 『シャレード(1963)』(c) 1963 Universal Pictures, Inc. & Stanley Donen Films, Inc. All Rights Reserved. 『マイ・フェア・レディ』(c) 1964 Warner Bros. Pictures, Inc. Renewed 1992 CBS Inc. All Rights Reserved. 『ロビンとマリアン』(c) 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. 『オールウェイズ』(c) 1989 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.+

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