Special スペシャル解説

「生誕90年特別企画 麗しのオードリー」の関連特集として毎月テーマ別にセレクトした特集を放送!
テーマに合わせたスペシャル解説を毎月ご紹介します。

スペシャル解説

未公開のオードリー

オードリー・ヘプバーンがハリウッドデビュー前に出演したイギリス時代の作品は、日本では残念ながら劇場未公開。"麗しのオードリー"ではその中から4本を厳選して、スター前夜のオードリーがどんな映画に、どんな役で出演していたかをファンにお届けする。駆け出し時代から個性が際立っていたオードリーに出会える楽しさと、1950年代のイギリス映画が繰り出す軽妙なジョークと毒のある笑いをこの機会に堪能して頂きたい。

まず、「オードリー・ヘプバーンの若妻物語」(51)は、結婚生活の混乱を描くドタバタコメディ。ロンドンの同じ家でせせこましく暮らす2組の若夫婦が、双方の子供を同時に見てくれる乳母を雇い入れるためについた嘘が、とんでもない騒動に発展していく。当時のロンドンの住宅事情の劣悪さ、妻にのみ降りかかる家事の重圧を、笑いのネタに使った風刺が効いた作品だ。それで、肝心のオードリーは騒動に巻き込まれる同居人のタイピスト役。脇役だが画面に登場しただけで空気を変えてしまうオーラを見逃さないで欲しい。

ジョークと毒々しい笑いがより強烈なのは「オードリー・ヘプバーンの素晴らしき遺産」(51)だ。冒頭でイタズラ好きな主人公が亡くなり、4人の親族たちに条件付きで遺産を託すと言い残す。その条件とは、1ヶ月間家政婦を務めること、1週間以内に罪を犯して服役すること、銀行強盗を実行すること、そして、最初に話した未婚女性と結婚すること。それが、4人各々に自分の短所と向き合わせることになるという皮肉な物語だ。端からだいたい展開は読めるものの、2流の犯罪小説ばかり書いている従弟のデニストンが、犯罪を犯そうとどう努力しても報われないという件は、くすくすが止まらない。最後に訪れるプチどんでん返しも含めて、脚本はよく練られているし、レストランのシガレット・ガール役で画面を横切るオードリーの"瞬間芸"は見もの。本当に瞬間なので気をつけて。

映画批評集積サイト"ロッテントマト"で満点の100%を勝ち取り、1952年の英国アカデミー作品賞に輝いた秀作が「ラベンダー・ヒル・モブ」(51)。金精錬所から銀行への金塊輸送を監視している超真面目な銀行員が、同じ下宿に越してきた土産物業者と結託し、一旦金を溶鉱炉で溶かし、エッフェル塔型の文鎮に変えてフランスに持ち出そうとするが、予想外のトラブルに見舞われて作戦はあらぬ方向へと転んでいく。テンポの良さと終始漂うユーモアが魅力の本作は、映画の冒頭で少しだけ顔を見せ、「まあ、素敵、ありがとう」とだけ言って立ち去るオードリーが残すただならぬ余韻も含めて、一見の価値はある。

この映画のロケ中にオードリーがコレット女史に発見され、舞台「ジジ」でブロードウェーデビューを果たすこきっかけになったのが、「オードリー・ヘプバーンのモンテカルロへ行こう」(51)。オードリーの下積み時代を語る上で欠かさない作品はミュージカル仕立てだ。モンテカルロで開かれる音楽祭に出場する楽団に1人の可愛い赤ちゃんが迷い込み、そこに、赤ちゃんを取り戻そうとする若い乳母、赤ちゃんを自分の子に仕立てて頭の固い親から結婚の承諾を取り付けたいお嬢さま、お互いに相手が我が子を連れ出したと誤解する有名女優(オードリー)とピアニスト夫妻が加わって、モンテカルロは大騒ぎに。途中に挟まるミュージカル・シーケンスが楽しく、歌が潤滑油になって話を盛り上げていく。オードリーが話す流暢なフランス語も是非、お聞き逃しなく!

『オードリー・ヘプバーンの若妻物語』

この映画の衣装デザイナーがいい仕事をしている。オードリー扮するイヴは登場シーンでボディコンシャスなスーツを美しく着こなしているし、ある場面では3つのボタンが間隔を開けて縫い付けられているダッチカラーのブラウスを着ている。他にも、若妻たちが着るストラップレスのイブニング、シフォンのドレス等々、女性の優雅さを前面に押し出した服選びは、女性に厳しい当時のイギリス社会に反旗を翻しているかのよう。

『オードリー・ヘプバーンの素晴らしき遺産』

騒動のきっかけになる死にゆく主人公、ヘンリーを演じているのはイギリスの名優、ヒュー・グリフィス。「ベン・ハー」(59)で知られるグリフィスは後に同じウィリアム・ワイラー監督の「おしゃれ泥棒」(66)でオードリー扮するヒロイン、ニコルの父親で贋作作家のシャルル・ボネ役でオードリーと再共演。因みに、オードリーは当初はより大きな役を依頼されたが、舞台の仕事と重なったために断念し、シガレット・ガール役に落ち着いたという経緯もある。

『ラベンダー・ヒル・モブ』

首謀者を演じるアレック・ギネスとスタンリー・ホロウェイが、黄金のエッフェル塔を追いかけて本物のエッフェル塔のらせん階段を、遙か地上めがけてくるくると下りていくシーンは、高所恐怖症の方にはお薦めできない。リアルなカメラワークが高所の臨場感を見事に演出しているからだ。この撮影法は7年後に製作されたアルフレッド・ヒッチコック監督のマスターピース「めまい」(58)に影響を与えたと言われている。ここ必見!

『オードリー・ヘプバーンのモンテカルロへ行こう』

オードリー演じるスター女優のメリッサは、わがままで自意識が高く、それでも、ファンに囲まれると作り笑顔で対応する、今で言うところのいわゆるディーバ。オードリーの女優キャリアの中でもこの種の役柄は珍しい。本当のオードリーとは真逆の役柄も、決して悪くないと思わせるのだ。劇中、撮影中のスタジオでブロンドのかつらを取り、ドレスを脱いで平服に着替え、足早に仕事場を後にするまでの流れるような動きも含めて、出番は少ないが見せ場はたくさんある。

『オードリー・ヘプバーンの若妻物語』© 1951 / STUDIOCANAL FILMS Ltd 『オードリー・ヘプバーンの素晴らしき遺産』© 1951 STUDIOCANAL FILMS Ltd 『ラベンダー・ヒル・モブ』© 1951 STUDIOCANAL FILMS Ltd 『オードリー・ヘプバーンのモンテカルロへ行こう』© 1951 TF1 Droits Audiovisuels

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