Special スペシャル解説

「生誕90年特別企画 麗しのオードリー」の関連特集として毎月テーマ別にセレクトした特集を放送!
テーマに合わせたスペシャル解説を毎月ご紹介します。

スペシャル解説

オードリーのヘアメイク術

「私は女らしさを表現するのにベッドルームはいらない。グラマーが自慢のスターが裸で表現することを、私は服を着たまま表現できる」とはオードリーのコメントだ。つまり、自分には異性を魅了するだけの目力がある、という意味だ。そのために、オードリーはアイメイクに徹底的にこだわった。

そこに登場したのが「ローマの休日」で出会い、以降、時代毎の代表作にメイクアップ・アーティストとして関わったローマ在住のイタリア人、アルベルト・デ・ロッシだ。まず、デ・ロッシはオードリーの濃い眉毛の先端を細く跳ねるように描き、瞼の端に狭い空間を作ることで目の大きさを強調する。結果、"ガルウィング(カモメの羽)"と呼ばれるスタイリッシュな眉毛が完成した。

また、アイブロウは特に丹念に行い、目尻の付け睫毛で"バンビ"と呼ばれるアイメイクを考案。こうして、信じられないことにオードリー本人は小さいと感じていた目が、カメラを通して観客の心を射抜くほどの輝きを持つことになる。そのメイクを受けて、目の美しさを損なわないこめかみを強調するヘアスタイルが発案された。

結果的に、観客の意識は目とこめかみ周辺に集中し、オードリーにとっては最大のコンプレックスだった角張った顎の存在感が打ち消される。顎とこめかみは顔の上下に位置し、相関関係にあるからだ。後に、記者から「あなたは世界一美しい目の持ち主ですね」と賞賛された時、オードリーはこう答えている。「いいえ、世界一美しい目のメイクです。それはみんなアルベルトのおかげよ」と。

「昼下りの情事」ではハリウッドのメイクアップ・アーティスト、ジョン・G・ホールデンが「ローマの休日」でデ・ロッシが作った眉毛と目のメイクを踏襲し、眉毛の先端はよりエッジィに、"バンビ"の睫毛はより長くアレンジ。髪を内側にカールさせたアリアーヌ・カットとも相まって、モノクロの画面でオードリーの個性がいっそう強調された。

続く「パリの恋人」では「ローマの休日」でデ・ロッシに協力したウォリー・ウエストモアが、"ガルウィング"を広く伸ばすように薄いラインを書き加え、ファッションモデルとして羽ばたくオードリー演じるジョーの躍動感をプラス。付け睫毛のボリュームも一層アップ。冒頭の本屋のシーンから活発に揺れ動くセミロングヘアをデザインしたヘアドレッサーのネリー・マンレーは、後に「ティファニーで朝食を」にも招かれ、あの高く結い上げたホリー・スタイルを誕生することに。

 女優として油が乗りきった34歳で出演したキャリア中期の代表作「シャレード」で、オードリーはとてつもなく洗練されたブルジョワ主婦として登場。ケイリー・グラント扮する謎の男、ピーターに疑惑を抱く度にくるくると変化する目の表情は、やはりデ・ロッシによるもの。「シャレード」は両者にとって「ローマの休日」「戦争と平和」「尼僧物語」に続く4度目のコラボ作。デ・ロッシは勿論、女優としての命でもあるヘアメイクには、自分の欠点をその職人芸でカバーしてくれる常連スタッフを起用する。それが、オードリー流なのである。

『ローマの休日』

"ガルウィング"の肝は眉毛の先端と、瞼の余白に明るいシャドーを置いて目の大きさを強調すること。目の力を誰よりも信じていたオードリーは、「目は心を現す鏡」とも言っている。彼女の強い要望に見事応えたアルベルト・デ・ロッシは、同時に、撮影当時の猛暑で汗が流れ落ちるのをメイクで食い止め、暑さのためにオードリーの顔にできた吹き出物を上手に隠すことも忘れなかった。まさに、彼のメイクはオードリーにとって救世主だったのだ。

『昼下りの情事』

「昼下りの情事」で一番印象的なシーンは、やはりクライマックス。ジバンシィの太いボタンが目を引くコートワンピースを身に付け、アリアーヌ巻きのスカーフで顔の外側を隠したオードリーのヒロインは、そのせいで余計に目の表情が強調されていつになく切なげだ。最後まで嘘をつき続けるアリアーヌの眉毛が、追いつめられた彼女の心に応じて歪んでいく様子は、主人公の心理をメイクが表現した名場面と言えるのではないだろうか。

『パリの恋人』

原題は「ファニー・フェイス」。写真家のアステアが暗室に逃げ込んできたオードリーのジョーに向けてシャッターを押し、出来上がった顔のどアップがそのまま映画のタイトルバックに使われる。大きく見開いた瞳と高い鼻、そげ落ちた頬を持つこの少女の顔は、間違いなく"ファニー"なのに、なぜか人の心の捉えて離さない。そんな人々の根本的な疑問に対する答えが、その斬新なヘアメイクによって提示されているのが「パリの恋人」。ファッションムービーとしては勿論、若き日のオードリーの表情集として見ても楽しい1作だ。

『シャレード』

スキー場のロッジで食事中のヒロインが突然水鉄砲の標的にされる。怒りながらずぶ濡れになったサングラスを外すと、そこからオードリーが現れ、彼女の匂いが劇場に溢れかえる。主演女優の、それも大スターの登場を告げるこの有名な場面でも、デ・ロッシのメイク術が効果満点だ。いきなり濡れてもオードリーの目と眉毛は少しも崩れないどころか、返って美しさを増すのだから。この「シャレード」を機にオードリー映画の撮影監督として起用され、「おしゃれ泥棒」「暗くなるまで待って」と立て続けにコラボしたチャールズ・ラングのメイクを生かす照明技術も、できれば意識して見て頂きたい。

『ローマの休日』コピーライト不要 『昼下りの情事』© 1957 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC. AND WARNER BROS., INC. All Rights Reserved 『パリの恋人』TM & © 2018 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 『シャレード(1963)』© 1963 Universal Pictures, Inc. & Stanley Donen Films, Inc. All Rights Reserved.

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