何の前知識もなくてこの映画を観たならば、冗漫で退屈な映画だと思うかもしれないが、次のことを知って見たならば、実に興味深い映画となる。
まずは主演のマリリン・モンローとクラーク・ゲイブルの遺作であるということ。野生の馬を捕まえる場面をスタントなしで行ったゲイブルは、その無理がたたってクランクアップ直後に心臓発作で亡くなったのだ。それだけに目を覆いたくなるような場面ではあるが、その迫力たるやすさまじいものがある。モンローはゲイブルの恋人役だが、撮影中、意気投合して私生活でも親密な仲になっていたそうだ。それがために、ゲイブルの死はモンローのせいだとゲイブル・ファンから非難され、この映画の後、謎の死を遂げている。
そしてもう一つ、この映画の脚本がモンローの亭主であるアーサー・ミラーであるということ。撮影時にはすでに夫婦間が冷え切っていて離婚寸前だったとのこと。だが、ミラーはモンローという人間を熟知しており、この映画では彼女の人生観、さらにはモンローの人生哲学までもが台詞となって浮かび上がっている。
この映画におけるモンローをセックス・シンボルの老いだと評する人がいるが、それは間違い。誰もがイメージするお馬鹿なかわいい娘のモンローではなく、素顔のモンローに最も近いのがこの作品。時には神々しくすら見える美しさ。己の死を本能的に悟ったような表情。何べんとなく「死」「生きる」という言葉が出てくるが、その時のモンローの表情の美しさは他のモンロー作品では絶対に見ることができない美しさである。しかしこの作品がモンローの遺作というのはあまりにも生々しくちょっと恐ろしいぐらいである。